相手の負担にならない程度の頼み事は、成長の機会に

リーダーの皆さんは、部下やメンバーに頼られる立場にあります。ただ、リーダーにも苦手なことはあるでしょう。例えば、「プレゼンテーションは得意でも、資料を作成するのは得意ではない」「オンラインでのプレゼンテーションツールで、画面共有の機能などがうまく使いこなせない」といった具合に。こんなときは自分で抱え込まず、得意そうな部下やメンバーにあえて頼んでみてください。
自分が少し苦手なお困り事を手伝ってもらうことは、決して恥ずかしいことではありません。部下にとっては、自分にできることや得意なことで上司やチームの役に立てることがあれば、それはうれしいもの。あなたと部下の心理的な距離を縮めることにもつながるでしょう。そしてそれは、部下に成長の機会を提供することにもなるのです。
ここで大事なポイントが2つあります。1つは、相手にとって過度な負荷にならない程度のお困り事の手伝いを頼むこと。もう1つは、指示や命令と感じさせないことです。「手伝ってもらえたらうれしいし、助かるんだけど」というニュアンスを伝えて依頼しましょう。そして、相手に頼んだことが完了したら、「ありがとう!」「手伝ってもらって助かりました」と、感謝の気持ちを伝えるようにしてください。
感謝の言葉は「承認」となり、次の行動へとつながる

ポイント(7)でも触れたように、「ありがとう」という感謝の気持ちを言葉にして伝えることは、とても大切な「承認行動」のひとつです。「ありがとう」と言われて、嫌な気持ちになる人はいませんよね。部下やメンバーがやってくれて当たり前のようになっていること、例えばゴミ箱のゴミを捨てる、コピー用紙を補充するといった行為を目にしたら、その場ですぐに「ありがとう」を伝える習慣をつけていきましょう。
リーダーの中には、部下やメンバーに対して感謝の気持ちを持っていても、言葉にするのは苦手という人もいます。しかし、心の中で思っているだけでは相手には伝わりません。相手の行動に即座に感謝の気持ちを伝えることを、行動科学マネジメントでは「行動強化」と呼びます。感謝の気持ちをその場で言葉にして伝えられたら、部下は承認されたという実感を持って、さらに行動しようとする心理が芽生えます。リーダーにとっても、部下やメンバーに感謝の気持ちを伝えることを意識していると、相手の良い行動に自然と目が向くようになります。「ありがとう」は信頼関係を築くうえでとても大切な言葉であり、コミュニケーションツールなのです。
即答の「はい」は条件反射で、理解していないことも

部下や後輩に業務の手順などを説明したり指導したりした際に、すぐに「はい、分かりました」と言われたら、実は少し注意が必要です。本当に話した内容を理解しているならよいのですが、実は理解していないまま、条件反射的に「はい、分かりました」と言ってしまっているケースも少なくありません。「メモを取りながら相手の話を聞いていたけれど、書き留めることに必死で、内容までは理解できていなかった」ということは、皆さんにも身に覚えがありますよね? それに、説明を受けた本人は「理解できた」と思っていたとしても、「できる」という段階まで理解が及んでいないことだってあります。
そんなときは話した内容を反復してもらってみると、相手の理解度が推し量れます。説明や指導をしたあとに、「じゃあ今、私が話したことを、もう1度言ってみてくれる?」と確認してみましょう。このとき相手が自分の言葉でしっかり内容を話せたら、それは理解して実践できると見なせます。逆に相手が言葉に詰まってしまったら、話は聞いていても内容をそしゃくできていない可能性が高い。もしかすると、相手は緊張してプレッシャーを感じているのかもしれません。
話した内容を確認したときに相手が言葉に詰まったところは、「ここが分からないんだな」と意識しましょう。そしてあらためて相手が理解できるよう、言葉で丁寧に補足するようにしてください。そこで相手がしっかり理解できたら、次に進む。このように、相手の理解に不安があるときには、内容を分解して確実に伝えていくようにしていきましょう。
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