原材料価格の高騰や円安で多くの企業が値上げの必要に迫られている。しかし、今も値上げができない企業は多く、原材料価格の高騰をうまく吸収できず倒産している企業も出ている。そこで今回は、値上げで失敗しないための3つのポイントについて解説する。


 3つのポイントは以下となる。

  1. いつ値上げを行うのか
  2. 誰に何の値上げを行うのか
  3. どのように値上げを顧客や世の中に伝えるべきか


①いつ値上げを行うのか

 まず、「いつ値上げを行うのか」だが、大切なのは「いきなり値上げを行わない」ということだ。ごくまれに告知当日や翌日に値上げを実施する企業があるが、かなりの確率で「炎上」している。プライシングの業界では、「内的参照価格」というものが存在しており、この内的参照価格が影響している。

 内的参照価格とは、消費者が商品を購入する際の基準にする価格「参照価格」のうち、過去の経験などから形成された消費者の記憶の中の価格のことを指す。その人が妥当と考える「値ごろ感」に近く、実売価格が内的参照価格よりも低い場合、相対的に「安い」と感じ、購入意欲が湧きやすくなる。

 例えば、普段から100円ショップで買い物をしていると、1品100円での購買経験が繰り返され、無意識のうちに100円という内的参照価格が形成される。そのため、100円ショップが急に200円にすると「高い」と感じ購入意欲が湧きにくくなるし、90円で販売されると「安い」と感じ購入意欲がかき立てられるはずだ。つまり、急な値上げは顧客の内的参照価格を超える可能性が高く、顧客の反発を生みやすくなる。

 一方で、例えば半年前に告知をすることにより、値上げ後の価格に接触する頻度が増し、値上げ後の価格に内的参照価格が近づいていくという現象が起きる。そのため、値上げを検討している場合、3カ月、半年、1年など、一定の周知期間を設けた上での実施と、早めの告知が重要となるのだ。

 そうはいっても、原材料の急な高騰など、値上げに緊急度を要求されるケースも多々あるだろう。その場合は、既存顧客に対してはいったん価格を据え置き、新規顧客から値上げを実施し、順次価格を一本化していく方法や、値上げから3カ月などの一定期間、値上げ分をポイントバックする方法などが考えられる。

売り上げの最大化を狙う

②誰に何の値上げを行うのか

 当たり前だが、どんな商品・サービスでも、設定された価格に対し、それを高いと感じる人も安いと感じる人もいる。収入や好みも異なれば、その商品に対するロイヤルティーも異なるためだ。そのため、価格が一定の場合、現在の価格より高くても買う層が購入すると売り上げの機会損失が発生し、現在の価格より安くないと買わない層は取り込むことができなくなる。一方、現在価格より高くても買う層には高く売り、安くないと買わない層には安く売ることができれば、売り上げを最大化させることができる(図1)。

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 事業者にとっては半ば夢のようなこの売り方をどう実現するかについては別の機会に触れたいが、値上げで失敗しないための観点として考えるならば、高くても買う層に対してのみ値上げすることも選択肢の1つになる。

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