原材料価格の高騰やロシアによるウクライナ侵攻、急速な円安などさまざまな要因が絡み合い、多くの企業が値上げを余儀なくされている。そんな中でも、14.3%の企業は、怖くて値上げができていないというデータもある。

 値上げができている企業とできていない企業の差は単に意思決定者の度胸によるところが大きいように感じるが、「うまい値上げ」と「下手な値上げ」があるのも事実だ。そこで今回は、顧客とのコミュニケーションというテーマで値上げを科学していこうと思う。

 値上げを成功させるポイントは2つある。1つは「顧客の許容金額を超えないこと」。もう1つは「顧客と適切なコミュニケーションを取ること」だ。

 前提として、顧客にはその商品・サービスに対し、「支払ってもいいと思っている金額」が存在している。「支払ってもいいと思っている金額」で競り合うオークションを想像すると分かりやすいだろう。たとえどれだけ顧客が熱狂している商品であっても、顧客の「支払ってもいいと思っている金額」を超えると購買は生まれない。そのため「顧客の許容金額を超えないこと」がとても重要なのだ。その金額のことをWTP(Willingness to pay)と言う。このWTPを第1回、第2回で紹介した調査によって明らかにした上で、いくら金額を上げるのかを決定すると値上げに成功しやすい。

 では、「顧客と適切なコミュニケーションを取ること」についてはどうだろうか。ここからは、SNSでもポジティブな反応が多数見られ、比較的上手に値上げを成功させたローソンの「からあげクン」のPRの事例を考察することで、顧客との適切なコミュニケーションはどのようにすればいいのかについて考えていく。

写真はイメージ(写真:Shutterstock)
写真はイメージ(写真:Shutterstock)

 からあげクンの値上げは、発売から36周年に当たる4月15日に告知された(価格改定自体は5月31日)。SNS、ニュースリリース、ファンクラブサイトにおいて異なる形式で告知をし、その内容には以下の3つの特徴が見られた。

  1. 発売36年を伝える
  2. 感謝の気持ちを伝える
  3. 増量キャンペーンを伝える

 それぞれの特徴ごとに、「行っていたこと」と「反響」を整理すると次のようになる。

①発売36年を伝える(SNS、ファンクラブサイト、ニュースリリース)
行っていたこと:どのプレスリリースにも「発売36年」「36年間」というワードがタイトルおよび冒頭で利用されていた。
反響:ツイッター上で36年に関連した書き込みが複数見られた。またメディアにおいても36年という言葉と共に報道されることが多かった。

②感謝の気持ちを伝える(SNS、ファンクラブサイト)
行っていたこと:36年間の感謝を伝えるところから文章が構成されている。
反響:ツイッター上では、ポジティブな反響が複数見られた。

③増量キャンペーンを伝える(ニュースリリース、その後のツイッター)
行っていたこと:価格改定前の4月26日から5月9日までの2週間、1個増量キャンペーンを実施。
反響:SNSでは値上げだけでなく、増量キャンペーン情報もあわせて投稿されていた。一部のメディアは増量キャンペーンについても伝えた。

 これらを見ていくと、単に値上げに関するネガティブな情報を発信するだけでなく、過去・現在・未来のそれぞれに関し、良い情報を組み合わせて伝えることが重要ではないかと筆者は考える。

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ローソンがからあげクンの値上げを発表した際に取ったコミュニケーションでは、現在・過去・未来のそれぞれに対し、ポジティブな情報も発信している
ローソンがからあげクンの値上げを発表した際に取ったコミュニケーションでは、現在・過去・未来のそれぞれに対し、ポジティブな情報も発信している

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