原材料価格の高騰や円安などによって多くの企業が製品やサービスの値上げに動き出している。一方で顧客が離れてしまうという不安からなかなか値上げができないという企業もあるだろう。そこで今回は、海外を中心に注目されている、顧客の理解を得ながら、継続的な値上げを成功させる手法「バリューベースプライシング」について解説する。

値決めの3つの手法

 プライシングには、大きく3つのアプローチが存在している。

  1. コストベースプライシング
    原価などのコストに対して、適切なマージンを乗せて販売するアプローチ
  2. 競合ベースプライシング
    ベンチマークする競合企業群の価格水準から適切な価格を検討するアプローチと、自社の価格変更をすることで他社の価格変更を意図的に誘発し独自のポジショニングを築くアプローチがある
  3. バリューベースプライシング
    競合製品と差別化された「価値」に対する、顧客の支払い意欲(willingness to pay)を基に価格を設定する方法

 一般的に、日本ではコストベースプライシングか、競合ベースプライシングのどちらかが採用されている。しかし、この方法で価格を決めているのであれば、それは非常に危険な状況かもしれない。というのも、この2つのアプローチを採用していた場合、もし原材料が高騰したら値上げを、もし競合企業が価格を下げたら値下げをすることになる。つまり、自社の収益に直結する重要な要素の1つである価格に関する意思決定が外部要因に依存してしまっているということになる。

 コストベースプライシング、競合ベースプライシングと比較し、バリューベースプライシングには、「収益力を継続的に上げることができる」というメリットがある。

 バリューベースプライシングは、「価値」に対する顧客の支払い意欲を基に価格を設定する。つまり提供しているサービスの「顧客の支払い意欲にひもづく価値」が増大するたびに、値上げの余地が生まれ、値上げしても顧客はついてきてくれる。

 ここで東京ディズニーリゾートのチケット価格について見てみよう。東京ディズニーリゾートを運営するオリエンタルランドは、2021年までに合計15回、直近では1~2年のスパンでチケットを値上げをしている。

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 筆者が見る限り、オリエンタルランドはむやみに値上げを繰り返しているわけではない。事業で得られた収益を、スタッフの育成や、アトラクション開発に投資し、「顧客の支払い意欲にひもづく価値」を増大することができている。そのため、これだけ値上げを繰り返しても顧客は離れずについてきてくれているのだ。

 事業を運営していれば顧客の声はおのずと入ってくるし、それを反映してより良い製品・サービスにしていこうとしている企業は多いはずだ。だとすれば、「顧客の支払い意欲にひもづく価値」が日々増大していても、つまり値上げ余地が生まれていてもおかしくなはい。

 バリューベースプライシングに移行することで、この値上げ余地をしっかりと生かし、収益を継続的に上げることができるようになるのだ。

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