感覚では顧客の離脱も

 ただ、この交点については分かりやすい半面、正確性に欠け、信憑性が低いという欠点があるのだ。

 具体的には、上限価格以上でも「検討に乗る人」は存在するし、同様に下限価格以下でも「品質が悪いと思わない人」も存在する。最適価格についていえば、本来、顧客が最大化する価格は、「安過ぎて品質が低いと思う人」と「高過ぎて検討に乗らないと思う人」が最小となる価格であり、これは必ずしも交点と一致するとは限らない。先にあえて「一般的」なPSM分析と述べたのはこのためだ。

 この問題を解消すべく、当社の取り組みでは一手間加えている。「高過ぎて検討に乗らない」と「安過ぎて品質が低い」を示す線を残し、他の線を消す。その上で、グラフをひっくり返すと以下のようなグラフが書ける。これを高過ぎるとも思わず、安過ぎるとも思わない人たち、つまり「この金額でも買ってくれる人」と仮定し、顧客数の推計とする。また「売り上げ=単価×数量」のため、この顧客数に単価をかければ売り上げも推計できる。

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 これを分かりやすく表記したものが、Netflixの解説で用いた顧客数推計・売り上げ予測シミュレーションだ。

 ただし、このシミュレーションを作成するに当たっては、あらかじめ顧客データをスクリーニングしておくことが欠かせない。なぜなら、顧客セグメントごとに支払ってもいいと思う金額は違うからだ。東京ディズニーリゾートのチケットに支払ってもいいと思う金額は、宿泊費や交通費を含めて検討する地方在住者と、関東圏在住者では異なる。集計するに当たって、適切な回答者を選定し、適切なデータのみでシミュレーションを作成して初めて、精度が担保できる。

 顧客セグメントについては、BtoBでは「業種・売り上げ規模・導入部門・導入目的」、BtoCでは「性別・年齢・年収・居住地」などが、支払ってもいいと思う金額を変化させる変数となることが多いことも付け加えておく。

 今回は、戦略的な値上げに欠かせない分析手法について解説した。冒頭でも述べた通り、今は企業にとって値上げの波に乗れるチャンスといえる。しかし、感覚に頼った値上げでは、思わぬ顧客の離脱を招きかねず、場合によっては横暴と捉えられるなど炎上のリスクも生じる。そんなとき、緻密な検証と確かな調査が何よりも値上げの味方になってくれるだろう。

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12/15ウェビナー開催、「外食を救うのは誰か」第1回――すかいらーく創業者の横川氏が登壇

 新型コロナウイルスの感染拡大から3年目となり、外食店に客足が戻りつつあります。一方、大手チェーンが相次ぎ店舗閉鎖を決定するなど、外食産業の苦境に終わりは見えません。どうすれば活気を取り戻せるのか、幅広い取材を通じて課題を解剖したのが、書籍『外食を救うのは誰か』です。
 日経ビジネスLIVEでは書籍発行に連動したウェビナーシリーズを開催します。第1回目は12月15日(木)19:00~20:00、「『安売りが外食苦境の根源だ』ファミレスをつくった男が激白」がテーマです。講師として登壇するのは1970年にファミリーレストラン「すかいらーく」1号店を開業した横川竟氏と、外食経営雑誌『フードビズ』の神山泉主幹です。書籍を執筆した記者の鷲尾龍一がモデレーターとなり、視聴者の皆様からの質問もお受けします。ぜひ、議論にご参加ください。

■日程:12月15日(木)19:00~20:00(予定)
■テーマ:「安売りが外食苦境の根源だ」ファミレスをつくった男が激白
■講師:横川竟氏(すかいらーく創業者、高倉町珈琲会長)、神山泉氏(外食経営雑誌『フードビズ』主幹)
■モデレーター:鷲尾龍一(日経ビジネス記者)
■会場:Zoomを使ったオンラインセミナー(原則ライブ配信)
■主催:日経ビジネス
■受講料:日経ビジネス電子版の有料会員のみ無料となります(いずれも事前登録制、先着順)。有料会員以外は3300円(税込み)となります。
※第2回は詳細が決まり次第ご案内します。

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