世界的な電気自動車(EV)シフトの流れに乗りつつ、「空飛ぶクルマ」や小型ロケットなどにも挑むホンダ。未来の成長に向けた大胆な挑戦を推し進めるには、戦略的な研究開発(R&D)や投資の元手を現在の事業で確保する必要がある。だが、今のホンダの稼ぐ力は必ずしも盤石とは言えない状況にある。

■連載ラインアップ
(1)ホンダの決断 ソニーとEV連合、激動の時代へ変革急ぐ
(2)ホンダ三部社長、ソニーとのEV新会社「テスラと十分に戦える」
(3)孤高では生き抜けないEV大競争 ホンダが選んだ「現実主義」
(4)もがくホンダ技術陣、EV開発でぶつかった「思い込み」「経験」の壁
(5)電動二輪車でも反撃へ 王者ホンダ、牙城死守へ新たな「生態系」
(6)「F1より難しい」 ホンダが「空飛ぶクルマ」で目指す真の革新者
(7)ホンダ、盟友GMがつないだLGとの縁 北米でEV電池を合弁生産
(8)稼げなくなったホンダの四輪車 拡大戦略のツケを払った八郷改革
(9)宗一郎がホンダに残した道しるべ 車ではなく、未来をつくる

八郷隆弘前社長が率いていた2020年10月、ホンダは自動車レース、フォーミュラ・ワン(F1)への参戦を21年シーズン限りで終了すると発表した(写真:ZUMA Press/アフロ)
八郷隆弘前社長が率いていた2020年10月、ホンダは自動車レース、フォーミュラ・ワン(F1)への参戦を21年シーズン限りで終了すると発表した(写真:ZUMA Press/アフロ)

 ホンダの業績を遡ってみると、2008年秋のリーマン・ショック後、利益成長が足踏みしていることは明らかだ。一過性の増益要因があった17年度(18年3月期)を除くと、連結純利益が7000億円を超えたのは21年度のみ。リーマン前の07年度(純利益は6000億円)から上積みできていない。

 最大の要因は四輪事業の稼ぎが低迷していることだ。07年度に四輪事業は6600億円の営業利益を稼ぎ、売上高営業利益率は7%近かった。それが近年は2~3%で低迷。利益額は07年度に遠く及ばない。二輪事業のおかげで、何とか全体としては大崩れしないで済んでいる。

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時価総額の伸びは見劣り

 「世界販売600万台」を掲げた伊東孝紳社長時代の拡大路線があだとなって、四輪車は稼げなくなってしまった。後任の八郷隆弘前社長は工場の閉鎖・再編などのリストラを進めるとともに、伊東時代のピークに7200億円を超えた年間の設備投資を3000億円台にまで絞り込んだ。自動車レースの最高峰、フォーミュラ・ワン(F1)への参戦終了も決めた。

 ただ、現時点で八郷改革の成果はまだ明確な数字としては表れていない。例えば、四輪事業の資産に対する営業損益の割合は、トヨタ自動車に水をあけられたままだ。

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 こうした現状は市場評価にも反映している。10年前の12年8月末、ホンダは株式時価総額でトヨタ、独フォルクスワーゲン(VW)に次ぐ業界3位だった。その後、電気自動車(EV)大手の米テスラや中国・比亜迪(BYD)が台頭。米フォード・モーターや独メルセデス・ベンツグループにも抜かれた。

 八郷改革の痛みをバネに変え、反転攻勢に出られるか。それとも足元の原材料高騰や半導体不足などの逆風に押されて足踏みを続けるのか。ホンダの評価の分かれ目となる。