ホンダが世界のトップをひた走る二輪車市場にも脱炭素のうねりが押し寄せている。この転換期にホンダの牙城を切り崩そうと、インドなどで新旧ライバルたちは電動化を急ぐ。二輪車の世界で主戦場といえる新興国でも電動車が離陸しつつある中、王者ホンダはどんなカードを切ろうとしているのか。

■連載ラインアップ
(1)ホンダの決断 ソニーとEV連合、激動の時代へ変革急ぐ
(2)ホンダ三部社長、ソニーとのEV新会社「テスラと十分に戦える」
(3)孤高では生き抜けないEV大競争 ホンダが選んだ「現実主義」
(4)もがくホンダ技術陣、EV開発でぶつかった「思い込み」「経験」の壁
(5)電動二輪車でも反撃へ 王者ホンダ、牙城死守へ新たな「生態系」
(6)「F1より難しい」 ホンダが「空飛ぶクルマ」で目指す真の革新者
(7)ホンダ、盟友GMがつないだLGとの縁 北米でEV電池を合弁生産
(8)稼げなくなったホンダの四輪車 拡大戦略のツケを払った八郷改革
(9)宗一郎がホンダに残した道しるべ 車ではなく、未来をつくる

 インド南部ベンガルールの街角に、四角い枠がビンゴカードのように並んだ大型の装置が備え付けられている。看板には「Honda e:SWAP」の文字。そこへ1台の電動三輪車が乗り付けた。インドの庶民の足として広く普及している三輪タクシー「リキシャ」の電動モデルだ。運転手は装置に近寄り、液晶画面近くにカードをかざした。

ホンダがインドに設けた電動三輪車向けの電池充電ステーション。二輪車電動化への布石でもある(ベンガルール)
ホンダがインドに設けた電動三輪車向けの電池充電ステーション。二輪車電動化への布石でもある(ベンガルール)

 自動販売機ほどの高さがあるこの装置は、電動三輪車を動かす電池の充電ステーション。カードを読み取って電池の充電残量のデータなどを取得し、空いているスロットが青く光ると交換開始の合図だ。運転手はリキシャの後部から電池を抜いて空きスロットに差し込み、装置が指示する充電済み電池を取り出して三輪車に装着する。慣れれば交換に1分とかからない。

 使われているのは、ホンダが開発した「ホンダモバイルパワーパック」と呼ぶ着脱式の電池だ。重さは1個当たり10キログラムほどで、大人なら片手で扱える。

 2050年に脱炭素社会を目指すという目標に向けて世界が走り始めた今、電動化の波は四輪車だけでなく二輪車にも押し寄せる。ホンダは年1702万台(22年3月期実績)を販売する二輪車の世界トップメーカーだ。その電動化に向けて、ホンダが起爆剤と位置付けるのが、交換式電池だ。

ホンダの着脱式電池「ホンダモバイルパワーパック」。使った電池と充電済み電池を簡単に交換できる(写真:吉成大輔)
ホンダの着脱式電池「ホンダモバイルパワーパック」。使った電池と充電済み電池を簡単に交換できる(写真:吉成大輔)

この記事は会員登録で続きをご覧いただけます

残り3014文字 / 全文4008文字

日経ビジネス電子版有料会員なら

人気コラム、特集…すべての記事が読み放題

ウェビナー日経ビジネスLIVEにも参加し放題

バックナンバー11年分が読み放題

この記事はシリーズ「ホンダの決断」に収容されています。WATCHすると、トップページやマイページで新たな記事の配信が確認できるほか、スマートフォン向けアプリでも記事更新の通知を受け取ることができます。