2040年に新車をすべて電気自動車(EV)または燃料電池車(FCV)にすると宣言したホンダ。車の開発現場では、これからのホンダの成長を担うEVの開発に技術陣が悪戦苦闘している。“売れるEV”とはどんなものなのか。その答えを探る過程で、時にはこれまでの車づくりの「常識」とぶつかることも。人も組織も変わることが求められている。

■連載予定(タイトルや回数は変わる可能性があります)
ホンダの決断 ソニーとEV連合、激動の時代へ変革急ぐ
ホンダ三部社長、ソニーとのEV新会社「テスラと十分に戦える」
孤高では生き抜けないEV大競争 ホンダが選んだ「現実主義
・もがくホンダ技術陣、EV開発でぶつかった「思い込み」「経験」の壁(今回)
・転換迫られる稼ぎ頭 電動二輪でもホンダは勝てるのか
・「F1より難しい」 ホンダが挑戦する「空飛ぶクルマ」
・「拡大戦略のツケを払った」6年間 ホンダ大改革の現在地
・工場の片隅で10年、あるホンダ女性技術者がつないだ新事業の芽
・ホンダの活路 「自動車」をやめる日

生産ラインを流れるホンダの中国向けEV「e:N(イーエヌ)S1」。2022年春、ホンダは中国向けにEVの「e:N(イーエヌ)」シリーズを立ち上げた
生産ラインを流れるホンダの中国向けEV「e:N(イーエヌ)S1」。2022年春、ホンダは中国向けにEVの「e:N(イーエヌ)」シリーズを立ち上げた

 中国南部の広東省広州市にあるホンダの研究開発(R&D)拠点、本田技研科技。中国市場向けの四輪車開発を担うこの場所で、エンジニアたちは頭を悩ませていた。

 彼らのミッションは、「ホンダ」ブランドとして初めて中国で発売する新型EVを開発すること。2018年に開発責任者(LPL)に就任した三谷哲也氏が主導し、どんな車をつくるべきか、そのコンセプトを決めるために知恵を絞っていた。

 初めに定めたグランドコンセプトは「宇宙感EV」だ。開発チームのメンバーにEVのイメージを問い「やっぱり宇宙だ」という答えが返ってきたことが起点となった。先進的で未来的な先端知能を有した車。音のしない静粛性はゼログラビティー(無重力空間)を想起させる。そんな発想で未来の車を考え始めた。

 「EVとして何ができるか」
 「EVには何が求められるか」

 開発の序盤、エンジニアたちは「EV」という2文字に鼻息を荒くしていた。主だった自動車メーカーの中で最後発に近いホンダが出すEVが並大抵のものではいけないという焦燥感もあった。

 「最新鋭の未来的な乗り物をつくらないといけない」「高度な技術・機能をふんだんに盛り込まねばならない」――。中国の地場新興メーカーが相次いで新型EVを発表するのを横目に、三谷氏らはいつしかそんな考えに縛られていたのだろう。

 やる気が空回りし、開発は壁に突き当たった。そんな中、現地トップの井上勝史常務執行役員中国本部長が「自分たちの車作りをしよう」と投げかけたことをきっかけに、先進知能化や技術の競争ではなく、地に足付いた開発を進めなければと立ち返った。

 新たに練り上げたコンセプトは「心動 未体験EV」。人の心を動かすEVをつくると軌道修正したことで、開発は再び動き出した。中心を担ったのは現地で採用された中国人エンジニアたち。制御技術や基盤技術の開発、車両評価などは日本で行うが、設定や仕様、搭載する機能は現地スタッフが答えを出していった。

最大の敵はクルマづくりの「経験値」

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ウェビナー開催、「なぜ世界はEVを選ぶのか」(全2回)

 日経ビジネスLIVEでは2人の専門家が世界のEV事情を解説するウェビナーシリーズ(全2回)を開催します。

 9月30日(金)19時からの第1回のテーマは「2035年、世界の新車6割がEVに 日本が『後進国』にならない条件」。10月14日(金)19時からの第2回のテーマは「欧州電池スタートアップのCTOが現地報告、巨大市場争奪の最前線」です。各ウェビナーでは視聴者の皆様からの質問をお受けし、モデレーターも交えて議論を深めていきます。ぜひ、ご参加ください。


■第1回:9月30日(金)19:00~20:00(予定)
テーマ:2035年、世界の新車6割がEVに 日本が「後進国」にならない条件
講師:ボストン コンサルティング グループ(BCG)マネージング・ディレクター&パートナー滝澤琢氏

■第2回:10月14日(金)19:00~20:00(予定)
テーマ:欧州電池スタートアップのCTOが現地報告、巨大市場争奪の最前線
講師:フレイル・バッテリー(ノルウェー)CTO(最高技術責任者)川口竜太氏


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