これから電気自動車(EV)競争に本格参戦するホンダ。年間の世界販売が407万台(2022年3月期)と世界の自動車メーカーの中で中規模の同社が「1000万台クラブ」のトヨタ自動車や独フォルクスワーゲン(VW)と同じ土俵に上がるのは容易ではない。規模のハンディーを他社とのアライアンス(提携)で補いつつ、次世代電池など最先端技術の開発では一歩も引かない。堅実さと意地の戦略で巨人たちに食らいつく。
■連載ラインアップ
(1)ホンダの決断 ソニーとEV連合、激動の時代へ変革急ぐ
(2)ホンダ三部社長、ソニーとのEV新会社「テスラと十分に戦える」
(3)孤高では生き抜けないEV大競争 ホンダが選んだ「現実主義」
(4)もがくホンダ技術陣、EV開発でぶつかった「思い込み」「経験」の壁
(5)電動二輪車でも反撃へ 王者ホンダ、牙城死守へ新たな「生態系」
(6)「F1より難しい」 ホンダが「空飛ぶクルマ」で目指す真の革新者
(7)ホンダ、盟友GMがつないだLGとの縁 北米でEV電池を合弁生産
(8)稼げなくなったホンダの四輪車 拡大戦略のツケを払った八郷改革
(9)宗一郎がホンダに残した道しるべ 車ではなく、未来をつくる
「2階に上げて、はしごを外す」
ホンダの開発現場でよく聞こえてくるフレーズだ。厳しい環境や後戻りできない状況に技術陣をあえて追い込み、極限の状態で知恵を絞らせる。苦しい場面に発揮される個人の力を信じる文化が、社内には今も根強く残っている。
「社外の人から見れば、『2階じゃなくて10階だろ』と思うかもしれません」。こう話すのは、ホンダの研究開発(R&D)子会社、本田技術研究所で全固体電池の開発を率いる梅津健太氏だ。将来の電気自動車(EV)向け電池の本命と目されている全固体電池。EV競争の行方を左右する先端技術を巡り、ホンダも自主開発に力を注ぐが、そう簡単にゴールまでたどりつけるものではない。

栃木県芳賀町にある本田技術研究所(栃木)。ある研究棟の一角で、ツンとした匂いが立ち込める中、白衣に身を包んだ研究者が材料の調合を試している。四輪車や二輪車を設計する自動車メーカーの雰囲気ではなく、まるで化学メーカーの研究室のようだ。
ここで開発しているのが全固体電池だ。現在EVで主流となっている液体リチウムイオン電池に比べ、充電1回当たりの航続距離を伸ばせる一方、充電時間を短縮でき、安全性も高くなる。電池価格の大幅な低減にもつながる技術と期待され、自動車大手が開発競争でしのぎを削る。
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