少子高齢化の加速や新型コロナウイルス対策などを受けて拡大を続ける日本の財政。企業収益の拡大などから2022年度の税収総額は過去最大を更新する見通しだが、国の一般会計歳出の6割程度しか賄えない状況だ。税収の主役が所得税から消費税に変わる中、今後のあるべき税制の姿とは何か。主税局の河本光博調査課長に聞いた。
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河本光博[かわもと みつひろ]
河本光博[かわもと みつひろ]
1998年一橋大学経済学部卒、大蔵省入省。米コロンビア大学留学、金融庁、首相秘書官補、主税局、主計局などを経て、2017年から茂木敏充経済財政・再生相秘書官。その後、3年間の英ロンドン赴任を経て22年7月より主税局調査課長 (写真:陶山 勉、以下同じ)

そもそも「税」は公的サービスの費用を賄うための「社会の会費」と言えますが、嫌なイメージしか湧かない人が多いと思います。

河本光博・主税局調査課長(以下、河本氏):はい。かつてある財務大臣が「税金が嫌いな人には2種類います。それは男と女です」というジョークを講演で仰っていました。当時はまだLGBTQ(性的少数者)の方々への認識が今ほどにはなかった頃ですが、いずれにせよ、「みんな税金が嫌い」という意識があるのは間違いありません。これは世界に共通する傾向ですね。

 でも特に日本では、税金は「国が一方的に奪っていくもの」、予算は「国から一方的に降ってくるもの」と分断した捉えられ方をされがちだと思います。税金に対する嫌悪感が強い印象を受けます。

税金として納められたお金はどこかの金庫にためているわけでも、偉い人の懐に入っているわけでもないんですよね。

河本氏:そうなんです。税収は全て、いや近年はそれ以上に、その年のうちに国の支出として国や経済に還元しています。道路や橋の建設費用、医療費、学校の先生の給料に充てるなどしていると言えば分かりやすいと思います。

 今は国の一般会計の約6割を税金で、約4割を国債・借金で賄っている状況です。では、国は何をしているのかと言えば、政府は導管のような存在で、要するに「資源の配分を変えている」のだと思います。公共サービスの提供もその中の一つですね。例えば警察や防衛など、人々が普段意識せずとも必ずあったほうがよいものに資源を集めていると言えます。

国は資源の配分を変えているだけとのお話ですが、どうして日本では「税金」と「予算」が分断されて理解されがちなのでしょうか。

河本氏:色々な説があり、私にも分かりません。ただ参考になるのがこの間まで赴任していた英国での報道ぶりです。例えば、英国ではコロナ対策の給付金を政府が決定した、という新聞記事を見ると、「our tax money」がこう使われようとしている、という感じで予算の報道なのに「tax money」という言葉が頻繁に出てきます。いわば「税金を使ってこれをするんだ」という意識付け、接続というものが市民の間にできているのではないかと感じていました。

 これに対し、日本ではメディアの報道も税と予算とが分かれた形で報道されています。英国とは異なり、税と予算が一体的に捉えられていない1つの原因かもしれません。

 「税金は奪われるもの」、または「予算は与えるもの」といった認識から離れて、国は予算と税制を使ってどういう資源配分を実現しようとしているのか、それはこの国の未来にとって良いことなのか悪いことなのか、という議論こそが、財政や民主主義の議論の出発点のような気がしています。

今の日本は税収だけで予算が賄えない状態にありますね。

河本氏:はい。先ほど、「国は導管の役割」と言いましたが、この民主主義的に決める資源配分には一つの大きな落とし穴があります。今生きている人が今の資源配分を決めるだけでなく、未来の人からの資源も借りてきて分配できるということです。資源配分を市民が決めるのは民主主義の基本ですが、今選挙権を持っている人たちが、選挙権を持っていない世代の配分も決めているということですね。

 赤字国債の発行によって将来にツケを回し、結果的に将来世代が自らの資源配分を決める権利を奪ってしまっているとも言えます。特に将来世代が減っていくことが見込まれる今の時代には、我々今を生きる世代はこれまで以上に注意して、将来に向けた望ましい資源配分は何なのかを考えるべきだと思います。

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