日本企業にとって、脱炭素政策への対応が重要な経営課題になっている。上場企業であれば、グローバル投資家からの支持を得るために、脱炭素に資するビジネスモデルの構築が求められている。欧州連合(EU)が準備を進める規制では、部品や製造過程を含めた脱炭素の進捗次第で、ペナルティーを科される枠組みが実現する可能性がある。企業規模の大小にかかわらず対応が必要だ。

 そのための事業変革である「GX(グリーントランスフォーメーション)」をいかに実現するのか。2020年に菅義偉政権が「2050年までのカーボンニュートラル(温暖化ガスの排出実質ゼロ)実現」を宣言した日本も、国を挙げて取り組む構えを取った。

 日経ビジネスLIVEでは9月8日に「経産省のGX戦略キーマンが直言 水素、アンモニア、原発…日本企業の勝機」と題するウェビナーを開催した。登壇したのは、経済産業省でエネルギー政策を長く担当した経験を持つ、製造産業局長の山下隆一氏。業界横断的な取り組みが必須のGXに向け、どんなエコシステムを目指すべきかについて解説しつつ、視聴者からの多くの疑問に答えた。収録したアーカイブ動画とともにお伝えする。

(構成:森脇早絵、アーカイブ動画は最終ページにあります)

安藤毅・日経ビジネス編集委員(以下、安藤):本日は「経産省のGX戦略キーマンが直言 水素、アンモニア、原発…日本企業の勝機」と題しまして、経産省製造産業局長の山下隆一さんにご講演いただきます。

山下隆一・経済産業省製造産業局長(以下、山下氏):まずは、GXを実現するための社会システム・インフラの整備に向けた取り組みの全体像についてご説明します。

 前段にあたるのが(経産省が5月に発表した)「クリーンエネルギー戦略」です。内訳は第1章が「エネルギー安全保障の確保」、第2章が「炭素中立型社会に向けた経済・社会、産業構造変革」という2章構成です 。もともとGXを中心に作られていた戦略ですが、ロシア・ウクライナの問題が起きたり、原油の高騰があったり、あるいは2022年3月には関東地区で節電のお願いをしなければならないほどの電力需給が逼迫する事態が起こったりしている状況を踏まえて、第1章にはエネルギー安全保障を入れました。その上で第2章でGXの方向性を出しています。

 このGXの中にも大きく2つの方向性があります。1つは、2050年のカーボンニュートラルの実現に向けて、社会インフラがどう変わっていくかということです。今まで人類は、化石燃料に乗っかって成長してきたわけですが、それをどのように変えていくのか。現時点で重要なキーになるテクノロジーは、水素、アンモニア、カーボンリサイクル、蓄電池、洋上風力のような発電。こういった新しいものをどうつくっていくのか。もう1つの方向性は、具体的にGXを進めていく中で、企業が1カ月後、半年後、1年後、具体的に何をやっていくべきか、というものです。

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 この両方を進めるための政策的要素として、予算措置、規制・制度的措置、金融パッケージがあり、GXリーグ、グローバル戦略という枠組みがあります。これがコアの5本柱です。その下に共通基盤として、デジタル化に向けた環境整備、イノベーションの創出・社会実装、研究者育成、地域・暮らしの脱炭素などがあります。本日は特に予算措置や規制・制度的措置を中心にお話しします。

重要なのは、経済と脱炭素の両立

山下氏:重要なことは、「脱炭素×経済の成長・発展」です。単に脱炭素を進めればいいわけではなく、経済の成長発展があってこその脱炭素だということです。両方を達成していかないといけないという視点で、クリーンエネルギー戦略を考えております。