今年6月下旬に東京電力ホールディングス管内で初の電力需給逼迫注意報が発令されるなど、電力需給逼迫の危機が叫ばれる回数が増えてきた。停電にならないよう全国の電力の需給状況をみているのが経済産業省資源エネルギー庁の小川要・電力基盤整備課長だ。需給逼迫時の対応や冬の供給力の見通しなどを聞いた。

小川 要 氏
小川 要 氏
1997年に通商産業省(現経済産業省)入省。2010年、資源エネルギー庁電力・ガス事業部政策課課長補佐。東日本大震災前後の3年間、エネルギー政策に従事。15年から18年まで資源エネルギー庁電力産業・市場室長として電力システム改革貫徹を推進。20年から電力・ガス事業部電力基盤整備課長に着任。(写真:北山宏一、以下同じ)

異例の記録的猛暑となったこの6月下旬、東電HD管内で初の電力需給逼迫注意報を発令しました。綱渡りの電力供給といった状況下で、現場の対応は大変だったのではないでしょうか。

小川要・経済産業省資源エネルギー庁電力基盤整備課長(以下、小川氏):いえいえ。むしろ、安定供給をするために現場で必死に対応されていたのは電力会社の発電所の方々です。火力発電所のトラブルというのは一定割合で起こるものです。6月下旬の4日間、各電力会社は「お願いだから、うちでトラブルが起きないでくれ」という思いで過ごしていたと聞きました。

 全国の需給状況をまとめて見られるのは(経産省所管の)電力広域的運営推進機関や私たちです。全国の需給状況は各電力会社の立場からは分からないので、私たちが電力会社に需給状況を正確に伝える必要があります。電力会社はこれまで長年、電気を供給してきた経験がある。逼迫すればどんなリスクがあるかといった点では私たち以上によく見えています。

気温が1度上がるとさらに火力発電3基分が必要に

電力逼迫「注意報」を受け照明が落とされた経産省庁舎内(写真:ロイター=共同)
電力逼迫「注意報」を受け照明が落とされた経産省庁舎内(写真:ロイター=共同)

電力の発電状況は1日を通してどのようになっているのでしょうか。

小川氏:まず、太陽光発電は日が照ると発電量は増えますが、日が出なければ発電量は落ちます。1日中を通して目いっぱい発電しているのは石炭やLNG(液化天然ガス)を燃料とする火力発電所。日中に太陽光発電の発電量がピークになり夕方にかけて落ちていくところで揚水発電をフルに稼働して夕方を乗り切ります。

 原子力発電所も火力も十分に稼働していたかつてはシンプルな発電体制でしたが、今の体制はチャレンジングです。天気や気温が時々刻々と変化するなかで、電力会社は試行錯誤しながら電気を供給しています。

夏の場合、気温が1度上がると電気の需要はどれだけ増えるのでしょうか。

小川氏:東電HD管内で気温が一度上がると、150万キロワット分の電力需要が増えます。火力発電所にすると出力60万キロワットが約3基分です。冬は、1度下がると数十万キロワット分の電力需要が増える。その意味で気温が電力需要に与える影響は大きいです。

 広域機関のホームページでは、各エリアの電力供給の余力を示す予備率が30分単位で出され、逐次更新されています。6月下旬の注意報発令時には、その数字が時間の経過とともにどんどん悪化していきました。これはもう、心臓によくなかったですね。

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