この連載では5回にわたって様々なケーススタディーを取り上げ、企業はこれから「行動の時代」を迎えると訴えてきた。今回は花王代表取締役社長執行役員の長谷部佳宏氏に、データを活用した最新の取り組みと、そこで大切にしている共創のあり方、これからの時代にメーカーとしてできること、やるべきことを聞いた。

私はこれから企業は『行動の時代』を迎えると考えています。長谷部社長はどうお考えでしょうか。
行動データで顧客理解の解像度が高まる、企業が一連の行動フローを支援できるようになる、というのは確かにこれからの時代に大切なことだと感じます。
花王は商品をベースにした企業なので、今まさに、これまでの「商品を売った後の最適化が考えられていないモデル」から、「売れた後もクローズドなサイクルが回るようなモデル」に変わっていこうとしています。そうしないと、データを使えない、非常にもったいない状態になると思っています。
データを使うためにはサイクルが回る構造でないといけない。これは、どういうことなんでしょうか。
何か商品を使っていただいて、使ってくださった方たちが喜んでくださる。その喜んでいただいた度合いを次の商品へフィードバックしようとした場合、今まではコールセンターに届いた声や売り上げを基にしていたんですが、これはかなりアナログで定量的ではないんですよね。そこを今、定量的にしていこうと取り組んでいるところです。
商品を使ったときの体験価値を、定量的にフィードバックするサイクルをつくるということなんですね。
例えば、我々は今「@cosme(アットコスメ)」を運営しているアイスタイルと一緒に、人の遺伝子情報であるRNA(リボ核酸)を基にした、血液型のような「肌型」のクラスター分けを進めています。この分類をすると、それぞれの肌型に合う商品と合わない商品が明確になりますので、その方に合うものだけをレコメンドできるのです。
自分の好きなタレントやインフルエンサーの影響だけでなく、そこにRNAを使った肌型の分類で自分に合うものが遺伝子レベルの統計で示されるようになると、今まで5点満点中4点だった評価が、例えば肌型に合うものは4.99点になります。
また、肌型に合わない商品は逆に評価が下がるので見せないようにしていく。そうすることで、好きなインフルエンサーの声を聞きながらも、自分の肌型に合うものが多く表示されるようになって無駄なものを買わなくなるため、「ジャーニー(旅)」が生まれるんです。
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