前回は、現在が「行動の時代」を迎えていることについて触れた。「行動データ取得」と「一連の行動フロー支援」のループを回すことが重要だということ、また、情報を受け取るだけではもはや価値を感じてもらえず、「自分に何かしらの行動をさせてくれる」ということが顧客にとっての価値になっていることについて説明した。
今回はまず、アフターデジタル社会の産業ヒエラルキーについて見ていこう。
アフターデジタル社会では前回述べた通り、行動データが重要になる。そのため、当然、行動データを大量に持っているプレーヤーが強い。具体的にはプラットフォーマー、特に決済プラットフォーマーが強い。それは、ペイメント(決済)が飲食、娯楽、移動といったあらゆる場面で発生し、横串で水平なデータが取れるからにほかならない。決済以外にも、スマートフォンの「Android(アンドロイド) OS」などもこのレイヤーに当たる。
次に「サービサー」といっているレイヤーにいるのは、移動、小売り、映画、音楽などそれぞれの領域で、いわば垂直に顧客の行動を知ることができたり、サービスを提供したりしているプレーヤーだ。各領域において、圧倒的なUX(ユーザー体験)で圧倒的なアクティブユーザー数を抱えているプレーヤーが競争力を持っている。
こうした状況の中で、商品を提供しているだけの企業、つまり行動データと顧客接点を十分に持てていない、あるいは活用できていない企業は、顧客に対して寄り添い型で支援することが難しいため、一番下のレイヤーに来てしまう。従来のものづくりだけを続けているメーカーの多くは、ここに位置する。
この産業構造は日本でも顕在化している。例えば、「LINE」と「Yahoo!」の経営統合はこの一番上のレイヤーを狙ったものだといえるだろう。ほかにもPayPayが当初100億円相当のキャッシュバックキャンペーンを打ち出していたが、これもまた一番上のレイヤーを取りに行くための打ち手で、他を圧倒する高いシェアにつながっている。
トヨタも、数年前から「我々はクルマづくりのメーカーからモビリティーサービス・プラットフォーマーになる」と宣言しており、「Woven City(ウーブン・シティ)」のようなまちづくりや、「TOYOTA Wallet(トヨタウォレット)」という決済サービスの提供を進めている。これも、上で述べたようなロジックが働いている結果と捉えられる。
上位プレーヤーの言いなりにならないために必要なこと
一方で、プラットフォーマーの力が強くなることによって、彼らの意思決定一つでこれまでうまくいっていたビジネスが立ちゆかなくなるケースも発生している。これを知るには米国でD2C(ダイレクト・ツー・コンシューマー)の先駆けとして注目されていた寝具メーカー「Casper(キャスパー)」の衰退が分かりやすい。
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