悲しいほど低い日本企業への評価

 残念ながら、日本は「人権の後進国」と呼ばれることが少なくない。近年の出入国在留管理局や外国人技能実習制度のゆがんだ運用などが海外から批判されることもこの一因だが、近年は、データで示されるビジネスにおける「人権の後進国」ぶりが目立つようになっている。

 まずは第三者機関によって格付けされた、企業の人権への取り組み度世界ランキング「企業人権ベンチマーク(CHRB)」を見てみよう。結論として、日本企業の評価は、総じて悲しいほど低い(図表)。

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 自動車業界では、日本は7社が評価対象になった。ホンダ、マツダがかろうじて平均を上回ったものの、他の5社は平均以下に低迷した。満点は100%だが、トヨタ自動車が11.6%、三菱自動車と日産自動車、スズキの3社は10%未満だった。

 自動車以外の業種では、ファーストリテイリングが26点満点中19.5点で比較的上位につけたものの、セブン&アイ・ホールディングスが5点、ファミリーマートが4.5点、京セラが2.5点、キーエンスが1点など「ほぼゼロ点」の厳しい評価を受けた。

日本企業が「現代奴隷」を助長している?

 日本の「人権後進国」ぶりを示す別のデータを紹介しよう。日本は、「現代奴隷」が生産に関与した産品の輸入額が年間470億ドルに達する。これは米国に次いで世界第2位(2018年)の規模だ。「現代奴隷」とは児童労働や強制労働などの状態を指す言葉で、サプライチェーンにおいてこれらの労働者が関与した産品を日本は大量に輸入していることをこのデータは表している。具体的には、中国からの電子機器、ベトナムからの衣類、タイからの魚、ガーナやコートジボワールからのカカオ、ブラジルからの木材などが代表例。2021年6月に朝日新聞が『日本が増やしている? 児童労働』と題したウェビナーを開催したのは、こうした背景によるものだ。

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 日本の企業がサプライチェーンにおける人権リスクを精査できていないことだけが、世界2位の「現代奴隷」産品の輸入の理由ではない。日本はそもそも制度として、貿易における人権配慮の仕組みが欠けている。

 欧米各国の多くは、途上国からの輸入の際に関税を減免する「一般特恵関税制度(GSP)」の適用条件に児童労働や強制労働を禁止する条項を設定している(米国は総輸入額の大きさゆえに現代奴隷による産品の輸入額も最大となっている)。サプライチェーンにおいて関税のコストというものは実は甚大で、「関税3%は法人税30%に相当」とも言われるほどだ。つまり、途上国が欧米に輸出するとき、児童労働や強制労働がないほうがコストを抑えられる可能性が高い。だが2022年現在、日本政府はこうした人権配慮の通商ルールを採用していない。

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