中国政府はこれまでかたくなに堅持してきた「ゼロコロナ政策」の緩和に踏み切った。政策への不満が爆発した抗議活動がきっかけとなったようだが、政府はウイルスの弱毒化が理由だと強調する。急速な「ウイズコロナ」への転換に対して、歓喜と同時に感染拡大への不安の声も出ている。

 「かなり多くの人が祝杯を挙げに来てくれているし、これでようやく解放だね」。週末の12月10日に中国上海市の日本料理店を訪れると、中国人オーナーの男性は笑顔でこう話した。

 師走を迎え突如始まった、新型コロナウイルスを徹底的に抑え込むゼロコロナ政策の緩和。全国各地で起きた抗議活動がきっかけで方針転換したと見られるが、中国政府はあくまでもコロナの弱毒化などを理由に緩和に踏み切ったと説明する。12月1日にコロナ対策担当の孫春蘭副首相が衛生部門との座談会で「中国の防疫対策は新たな局面、新たな任務を迎えた」とゼロコロナ政策の緩和を示唆。中国国営の新華社通信などもオミクロン型の弱毒性をアピールするなど、一気に緩和へと転換した。

上海市ではショッピングセンターなどでQRコードをスキャンして陰性証明書を提示する必要がなくなった
上海市ではショッピングセンターなどでQRコードをスキャンして陰性証明書を提示する必要がなくなった

 とはいえ、ゼロコロナ政策の緩和は、大規模な封鎖が解除された広東省広州市などを除けば段階的に進んだと言えそうだ。上海など主要都市では12月5日から緩和策が導入されたが、初日には地下鉄など公共交通機関や、公園など屋外の公共の場に入る際に陰性証明書の確認を取りやめただけだった。上海や北京では翌日の6日にも追加で緩和されたが、証明書の提示が新たに不要になったのはオフィスビルやショッピングセンター、スーパーなどに限られていた。

 上海で住民が歓喜したのは、飲食店での陰性証明書の提示が不要になった12月9日からだろう。医療機関や学校、老人ホームなどに入るには、依然として陰性証明書の提示が必要だが、多くの上海市民にとってはPCR検査を受けなくても日常生活を送れるようになった。冒頭の中国人オーナーが、「ようやく解放」と話したのはこのためだ。

航空券の検索は3年ぶりの高水準

 ゼロコロナ緩和に湧くのは飲食店だけではない。旅行業界もそうだ。都市や省をまたぐ移動には一定期間の隔離などの規制があったが一気に緩和されつつある。

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