新型コロナウイルスの感染再拡大で、成長に急ブレーキがかかった中国経済。各地で起こる「異変」を調べると、習近平政権が犯した3つの失策が見えてきた。連載の最終回は、不動産を筆頭に苦戦が続く中国経済の中でも、数少ない成長産業であるEV(電気自動車)を取り上げる。政府の補助金などもあり、販売そのものは好調だが、自動車業界からは不満の声が上がる。
ロックダウン(都市封鎖)解除から2カ月余りがたった8月下旬。上海市内のショッピングモールのEV販売店に足を運ぶと多くの人が押し寄せていた。米テスラだけでなく、上海蔚来汽車(NIO)や理想汽車(リ・オート)といった、中国の新興EVメーカーの店舗も人気を博している。

「補助金もあるし、電気代など維持費も安いのが決め手になった。街乗りが中心なので1カ月の電気代は300元(約6000円)ほどで済んでいる」。上海市でのロックダウン(都市封鎖)解除直後にガソリン車からEVに買い替えた居凛さんは笑顔でこう話す。
販売そのものは好調だ。中国汽車工業協会が9月9日に発表した、8月におけるEVなどの新エネルギー車の販売台数は前年同月比2倍の66万6000台と、単月として過去最高を記録した。新車販売台数(238万3000台)に占める新エネルギー車の比率は27.9%となり、3割突破が目前に迫っている。
半導体不足などの影響をはねのけて販売台数が伸びている要因の一つが政府や自治体の強力な支援だ。政府による従来の補助金や自動車取得税の免税措置に加えて、上海市などの地方政府も販売支援策を打ち出した結果、EVの普及が一気に進んだ。
中国政府は8月、新エネルギー車の自動車取得税を2023年末まで免除する方針を打ち出すなど、今後も市場規模は拡大していく可能性が高い。中国の安信証券は、中国における新エネルギー車の販売台数が23年には1036万台になると予測している。
「ほとんどのEV企業が赤字」
順風満帆に見える中国EV市場だが、現場からは悲痛な声が上がっている。
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この記事はシリーズ「佐伯真也が見る中国経済のリアル」に収容されています。WATCHすると、トップページやマイページで新たな記事の配信が確認できるほか、スマートフォン向けアプリでも記事更新の通知を受け取ることができます。
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