新型コロナウイルスの感染再拡大で、成長に急ブレーキがかかった中国経済。各地で起こる「異変」を調べると、習近平政権が犯した3つの失策が見えてきた。中国政府による大きな政策ミスの1つは、コロナ感染拡大の封じ込めを狙う「ゼロコロナ政策」への固執だ。中国国民は不満を抱きながら、終わりの見えない行動制限と向き合っている。
「今、一番したいのは旅行。でもこの3年間、一度も上海から出られていない」。上海市内に住む張斌さんはため息交じりにこう話す。
9月の中秋節や10月の国慶節など行楽シーズンに突入する中で、中国国内では張さんのように旅行に二の足を踏む人が増えている。理由は中国政府が堅持する「ゼロコロナ政策」で行動が制限されているからだ。定期的なPCR検査で陰性という結果がなければ店舗などに入れないほか、感染者が増えた際にはロックダウン(都市封鎖)すらいとわない政策が続いている。

「中国のハワイ」でロックダウン
影響を大きく受けているのが旅行業界だ。中国文化観光省の発表によると、コロナ感染が再拡大した2022年上半期の国内旅行者数は前年同期比22%減の14億5500万人となった。同期間の国内観光収入も1兆1700億元と28%減っている。
夏休みシーズンを迎えると、海南省やチベット自治区、新疆ウイグル自治区などの観光地で感染者が増加するという結果を招いた。「中国のハワイ」と呼ばれるリゾート地である海南省海南島が封鎖され、約8万人の観光客が島内に足止めされることになった。
9月の中秋節でも、旅行を自粛する動きは残ったまま。中国文化観光省の発表では、中秋節の連休に国内旅行者数は7340万9000人と前年同期比で16.7%減ったほか、同期間の観光収入も286億8000万元と22.8%減った。「隔離されると仕事にも影響が出るため、旅行には行けない」(張さん)という声は多い。
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この記事はシリーズ「佐伯真也が見る中国経済のリアル」に収容されています。WATCHすると、トップページやマイページで新たな記事の配信が確認できるほか、スマートフォン向けアプリでも記事更新の通知を受け取ることができます。
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