成長に急ブレーキがかかる中国経済。各地で起こる「異変」を調べると、習近平政権が犯した3つの失策が見えてきた。

 連載の第2回は、中国当局による規制を取り上げる。学習塾は壊滅的な打撃を受け、業態転換に必死だ。最も規制が厳しいネット大手では、業績が頭打ちになるなどイノベーション欠乏症に陥りつつある。

 わずか半年余りで9割減──。ある産業が、政府による規制で壊滅状態に追い込まれている。それは学習塾だ。中国当局は2021年7月、義務教育中の子供に対して語学や数学などの校外補習を行う学習塾について、新規の開業許可を凍結し、既存の塾には「非営利団体」への転換を義務付けた。

2021年7月、義務教育中の子供に対して語学や数学などの校外補習を行う学習塾は突然、当局の規制対象となった(写真は小学校での授業風景、アフロ)
2021年7月、義務教育中の子供に対して語学や数学などの校外補習を行う学習塾は突然、当局の規制対象となった(写真は小学校での授業風景、アフロ)

 過度なもうけ主義に走る教育業界を是正し、子供に文化や運動を学ぶ時間を与えるというのが表向きの狙い。だが、海外にいる外国人を雇って行うオンライン授業も禁止するなど、外国人教師の雇用制限など思想統制の思惑も垣間見える。

 結果として塾を開く企業や教室数は、規制前の約12万4000から今年2月時点で9728と、規制強化から半年強で92%減と壊滅状態になった。実際、上海市内を歩くと、営業停止を余儀なくされた塾を目にする。科学や美術、スポーツなど、規制の対象から外れた授業に活路を見いだす企業も出ている。

 もっとも、「学歴」に直結しない授業の提供が消費者の心をつかむかどうかは不透明だ。小学生の子供を持つ上海市内の40代男性は、「塾が閉鎖された際は驚いたが、オンラインでこれまで通りの授業を行う個人の教室を見つけて子供を学ばせている」と明かす。当局の締め付けによる萎縮は、中国の未来を背負う人材や企業の育成を阻んでいる。

「杭州」の「馬氏」を調査で騒然

 浙江省杭州市の国家安全局が「馬氏」を国家安全を脅かした疑いで調査中──。中国国営中央テレビ(CCTV)が今年5月3日に報じたニュースは、中国全土に衝撃を与えた。

 報道内容は、馬という人物が海外の反中国勢力と結託して、国家分裂などの活動に携わった疑いがあるという断片的なもの。ただ「杭州市」と「馬」というキーワードから、同市に本社を置くネット通販大手、アリババ集団創業者の馬雲(ジャック・マー)氏ではないかとの臆測が広がった。同日の香港株式市場でアリババ株は一時、前営業日比9.4%下げるなど急落した。

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この記事はシリーズ「佐伯真也が見る中国経済のリアル」に収容されています。WATCHすると、トップページやマイページで新たな記事の配信が確認できるほか、スマートフォン向けアプリでも記事更新の通知を受け取ることができます。