2022年4~6月期に実質の国内総生産(GDP)が前年同期比0.4%増と、ほぼ「ゼロ成長」に陥った中国経済。上海市の大規模ロックダウン(都市封鎖)が明けた6月以降も、力強さに欠ける。各地で起こる「異変」を調べると、習近平政権が犯した3つの失策が見えてきた。
「急減速の中国経済 習政権、3つの失策」と題した連載の第1回は、これまでもリスクが指摘されてきた不動産業界を取り上げる。夏以降、消費者が住宅ローンの支払いを拒否する動きが各地で広がっている。8月中旬、取材班は「ローン不払い」運動が相次ぐ、河南省鄭州市を訪れた。
連日40度を超える記録的な猛暑が中国各地を襲った8月中旬。中国中部に位置する河南省の省都、鄭州市の郊外を訪れると、そこには廃虚のような光景が広がっていた。

訪れたのは「瀚海思念城」と呼ばれる大規模マンションが建設されるはずだった場所だ。現地の不動産サイトなどの情報によると、2019年に一般販売が開始され、20年には購入者に引き渡される計画だったという。
だが、引き渡し予定から2年たった今でも建設の進捗は目視で1~2割程度。作業者が出入りするはずの通用ゲートは封鎖されており、建設現場内に人の姿はなかった。住宅展示場に足を踏み入れると、3割程度の物件には「販売済み」を示す赤い印がつけられていた。現地メディアによると、昨年末には購入者が不動産開発会社に対する抗議デモを実施したという。さらに今夏からは購入者が集団で住宅ローンの返済を拒否する異例の事態に陥っている。

「以前は多くの人が来ていたけど、2年以上は工事がストップしたままだ」。近くで自動車整備サービスを営む男性は、商機を失ったくやしさをにじませながらあきらめ顔で話す。

「不良建築の都」に
商(殷)の時代に都が置かれたことから「中国八大古都」の一つに数えられる鄭州市。だが、3600年近くがたった現在、現地メディアからは「不良建築の都」という不名誉な称号が与えられている。今年9月に市が明らかにした情報では、72件のマンションが工事を中断しており、10万人以上が影響を受けているという。

鄭州市だけではない。中国全土でマンションの建設が中断し、未完成のまま放置されるケースが続出。今夏からは購入者が住宅ローンの支払いを拒否する動きが広がっている。米IT企業が手掛ける情報共有サイトには、中国での住宅ローンの支払い拒否を表明する動きが続々と書き込まれており、その数は9月8日時点で119都市、342物件に及ぶ。
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