6月に大規模ロックダウン(都市封鎖)が明けた上海市。ゼロコロナと経済の両立を目指す考えだがその爪痕は大きく、H&Mの旗艦店などが閉店を余儀なくされた。中国全体の経済成長が鈍化する中で明確な解は見えていない。

 夏本番を迎えた7月中旬。ナイキやアディダス、無印良品といったブランドの路面店が立ち並ぶ上海市中心部を訪れると、ある大型店のシャッターが閉じられていた。わざわざ足を止めて店舗を物珍しそうにのぞき込む人の姿もあった。

6月末にひっそりと閉店した、上海にあったH&M1号店の跡地
6月末にひっそりと閉店した、上海にあったH&M1号店の跡地

 ある店舗とは、スウェーデンのカジュアル衣料大手ヘネス・アンド・マウリッツ(H&M)の旗艦店だ。2006年にオープンした中国本土における第1号店だったが、6月末にひっそりと閉店した。おなじみの赤いブランドロゴマークは外されており、その痕跡が残るのみ。1カ月たった現在も、新たなテナントは入居していない。

ロックダウンが追い打ち

 中国進出の際には大きな話題を集める象徴的な存在だった1号店を閉店した理由をH&Mの中国法人は明かしていない。実際には大きく2つの要因があるとみられる。

 1つが中国・新疆ウイグル自治区産の綿花に関する人権問題だ。同社がいち早く新疆綿の不使用を表明したことで中国世論が反発。不買運動へとつながった。今も百度(バイドゥ)などの地図アプリ上で「H&M」という単語を検索しても、結果が表示されない状態が続く。

 もう1つの理由は上海での長期にわたるロックダウン(都市封鎖)だ。新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、上海市は3月末から実質的なロックダウンを実施した。約2500万人の人口を抱える大都市に都市封鎖は約2カ月間に及び、住民は生きることに苦難を強いられ消費どころではなかった。不買運動による売り上げ減に加えて、長期間にわたるロックダウンがとどめを刺した格好だ。

 衣類や飲食など小売り・サービス業の多くは、ロックダウン後もその後遺症に苦しんでいる。上海随一の服飾卸売市場として知られる七浦路では、経営に窮した店主たちがロックダウン期間中の家賃免除を求めて大規模デモを実施した。

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