中国政府が5月21日、米半導体大手マイクロン・テクノロジーの製品について、重要な情報インフラプロジェクトでの調達を禁止すると発表した。米国が進める半導体の対中規制強化への対抗措置とみられる。マイクロンを標的とした思惑はどこにあるのか。

 「中国としては何らかのアクションをしたかったのだろう」。中国政府が発表した半導体規制に対して、複数の業界関係者はこう感想を漏らす。

中国政府は米半導体大手のマイクロン・テクノロジー製品の調達禁止を発表した(写真:NurPhoto /Getty Images)
中国政府は米半導体大手のマイクロン・テクノロジー製品の調達禁止を発表した(写真:NurPhoto /Getty Images)

 中国政府が21日に発表したのは、米半導体大手のマイクロン・テクノロジーへの規制だ。同社製の半導体について、中国の重要なインフラプロジェクトで調達することを禁止すると発表した。中国の国家インターネット情報弁公室が、中国で販売されたマイクロン製品を調査したところ、「深刻なネットワークセキュリティー上の問題があり、中国の重要情報インフラのサプライチェーンに重大なリスクを引き起こし、中国の国家安全保障に影響を与えることが判明した」という。

 これに米政府も即座に反応。米ブルームバーグなどの報道によると、米商務省の報道官は今回の措置に強く反発し、「中国の行動が引き起こした半導体メモリー市場のゆがみに、同盟国やパートナーと対応していく」と表明したという。

 22日には中国外務省の毛寧副報道局長が、米政府が韓国の半導体企業に供給の穴埋めをしないよう働きかけているとされる点に対して、「断固として反対し、関係国の政府と企業が中国と協力して多国間貿易システムを守り、グローバルなサプライチェーンを維持することを希望する」と反発。米中間で舌戦を繰り広げている。

激しさ増す米中規制に対抗

 今回、中国政府がマイクロン製品の調達禁止に踏み切ったのは、米国による半導体輸出規制が激しさを増しているためだ。18年以降、米政府は安全保障上の理由から中国への輸出規制を強化してきた。華為技術(ファーウェイ)や半導体受託製造大手の中芯国際集成電路製造(SMIC)を事実上の禁輸リストに追加。22年にはその範囲を拡大し、先端技術に対する規制を一層強化した。

この記事は会員登録で続きをご覧いただけます

残り1223文字 / 全文2077文字

日経ビジネス電子版有料会員なら

人気コラム、特集…すべての記事が読み放題

ウェビナー日経ビジネスLIVEにも参加し放題

バックナンバー11年分が読み放題

この記事はシリーズ「佐伯真也が見る中国経済のリアル」に収容されています。WATCHすると、トップページやマイページで新たな記事の配信が確認できるほか、スマートフォン向けアプリでも記事更新の通知を受け取ることができます。