日産自動車は、中国江蘇省蘇州市で自動運転タクシーの実証実験を3月上旬に開始する。中国での自動運転のサービス提供は日系自動車メーカーで初めてという。中国ネット検索最大手の百度(バイドゥ)などライバルがひしめく中、どのように差異化を図っていくのか。

 「安全で快適な自動運転タクシーを目指したい」。日産自動車の中国法人傘下で自動運転を手掛ける日産出行服務(日産モビリティサービス)の二川一穣総経理は、3月上旬に始める自動運転タクシーの実証実験についてこう意気込んだ。

日産自動車が中国江蘇省蘇州市で3月上旬に実証実験を開始する自動運転タクシー
日産自動車が中国江蘇省蘇州市で3月上旬に実証実験を開始する自動運転タクシー

 開始する実証実験は、蘇州市郊外にある高速鉄道の蘇州北駅の住民や通勤者などに向けたもの。自動運転タクシーの専用アプリを使い、駅とホテル、オフィス、日産の自動車販売店などの地点間を移動できる。毎日午前8時から午前8時まで運行する。車種については、今年3月から9月までの第1期では電気自動車(EV)の「リーフ」2台を使い、10月からの第2期では同じくEVの「アリア」5台を投入する。実証実験のため、サービス料金は無料となる。緊急時に備えて、助手席には監視員が同乗する。

緊急時に備えて、助手席には監視員が同乗
緊急時に備えて、助手席には監視員が同乗

 日産によると、中国での消費者向け自動運転サービスの実証実験は日系メーカーでは初という。実証実験を通じて得た運行データから自動運転技術の精度を改善していく考え。「中国では2025年以降に商用化を目指している」と、二川氏は話す。

 事業化への一歩を踏み出した日産だが、中国での自動運転タクシーは競合ひしめくレッドオーシャンの様相を呈している。先行する1社が中国ネット検索大手の百度(バイドゥ)で、昨年8月に湖北省武漢市と重慶市の限定エリアで完全無人運転タクシーの営業を開始した。23年には完全自動自動運転タクシーを全国で200台追加する計画で、運営規模を拡大する考えだ。

 他にも上海汽車集団などの大手から、小馬智行(ポニー・エーアイ)などの新興勢力まで数多くの企業が自動運転タクシーの開発を急いでいる。日産が自動運転タクシーを展開する蘇州市でも10社近い企業が、実証実験を進めているほどだ。日産の中国現地法人が日産モビリティサービスを設立したのは22年。ライバルがひしめく中、後発とも言える立場でどのようにして存在感を発揮していくのか。

蘇州市の自動運転タクシー乗り場には実証実験を進める企業の名がズラリと並ぶ
蘇州市の自動運転タクシー乗り場には実証実験を進める企業の名がズラリと並ぶ

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