中国ディスプレー最大手の京東方科技集団(BOE)が有機ELディスプレーの開発で韓国勢を猛追している。最先端技術の量産導入が間近に迫り、米アップルの「iPhone」上位モデルへの提供を目指す。数少ない成功モデルといえる中国のディスプレー産業だが、過剰投資の懸念もつきまとう。

■この連載ここまで
(1)中国EVの実力、特許分析で鮮明 電池制御や交換など軸にコロナ禍でも出願倍増
(2)窮地のファーウェイ、車載で反攻 中国EVの躍進支える産学官連携
(3)「驚きの投資増」米規制で打撃の中国が見つけたパワー半導体という活路
(4)「禁じ手」も辞さぬ中国の執念 山東省に複合機の一大集積地が出現
(5)ついに中国勢が工作機械で日本に「逆上陸」、超精密加工を武器に
(6)時価総額2.9兆円でフィリップス超え、急成長する中国の新興医療機器メーカー
(7)CATL・BYDだけじゃない 電池主要4部材で中国企業シェア7~8割の衝撃

 「いよいよ量産時期が間近に迫ってきた」。中国ディスプレー最大手の京東方科技集団(BOE)が開発を進める、ある技術の動向に業界関係者の注目が集まっている。

 技術の名は「LTPO(低温多結晶酸化物)」。ディスプレーを駆動するTFT(薄膜トランジスタ)に使われ、表示性能と低消費電力に優れた有機ELディスプレーを実現できる。

中国ディスプレー最大手の京東方科技集団(BOE)は有機ELディスプレーでもシェアを拡大している
中国ディスプレー最大手の京東方科技集団(BOE)は有機ELディスプレーでもシェアを拡大している

 量産面でリードするのはサムスン電子やLGディスプレーなどの韓国勢。新型コロナウイルスの感染拡大で工場の稼働が停止し、品薄となっている米アップルのスマートフォンの上位モデル「iPhone14 Pro」シリーズに搭載されている最先端技術だ。

 BOEは、10年代後半から有機ELの開発に力を注いでおり、韓国2社を猛追する立場だ。17年に四川省成都市で有機ELの量産に踏み切った。21年には韓国勢に割り込む形で、悲願だったiPhone向けの有機ELの提供にもこぎ着けている。

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この記事はシリーズ「佐伯真也が見る中国経済のリアル」に収容されています。WATCHすると、トップページやマイページで新たな記事の配信が確認できるほか、スマートフォン向けアプリでも記事更新の通知を受け取ることができます。