中国がプリンターなど複合機の「国産化」にまい進している。北東部の山東省威海市では、台湾の鴻海(ホンハイ)精密工業を筆頭に、プリンター関連の一大集積地が形成されつつある。中国市場に進出する日本企業には、中国国内で設計開発や生産を要求する「禁じ手」ともいえる揺さぶりをかける。
■この連載ここまで
(1)中国EVの実力、特許分析で鮮明 電池制御や交換など軸にコロナ禍でも出願倍増
(2)窮地のファーウェイ、車載で反攻 中国EVの躍進支える産学官連携
(3)「驚きの投資増」米規制で打撃の中国が見つけたパワー半導体という活路

中国北東部にある山東省威海市。三方を黄海に囲まれ水産業が盛んな地方都市にある空港から車を約1時間走らせると、「富士康科技集団(フォックスコン)」の看板が付いた巨大工場が突如として現れる。
世界最大のEMS(電子機器の受託製造サービス)である台湾の鴻海(ホンハイ)精密工業が、2022年7月に生産を開始したプリンター工場だ。第1期となる工場への投資額は3億5000万ドル(約490億円)。敷地面積は約29万m2と広く、工場を徒歩で周回すると30分はかかる。

この新工場で生産されるのは、米HP向けのレーザープリンターやインクジェットプリンターだ。鴻海によると、フル稼働時の生産能力は年間1200万台以上で、売上高は約200億元を見込んでいるという。「鴻海は従業員も多いし、お客がいっぱい来て大変だ」。鴻海の新工場前で小型のスーパーを営む男性は、思わぬ経済効果に笑みを浮かべる。
鴻海だけではない。新たに立ち上がった工場周辺には、同業となるEMS大手の米ジェイビル・サーキットに加えて、聯想集団(レノボ・グループ)や億和精密工業控股(広東省深圳市)などの中国企業も大規模な開発・製造拠点を構築済みだ。他にも、中国や台湾企業が急ピッチで製造拠点の建設を進めている。

中国メディアの報道によると、新工場周辺には部品や素材などのサプライヤー約120社が集結しているという。「プリンターの開発から製造に至るまで、一大集積地が形成されつつある」と、みずほ銀行産業調査部香港調査チームの鈴木晃祥氏は指摘する。
世界の3台に1台を威海産に


先端技術の獲得に並々ならぬ執念を燃やす中国。現在、触手を伸ばすのが、プリンターなど複合機の技術だ。威海市で進む工場の建設ラッシュはその象徴といえる。同市は最終的に年3000万台、世界のプリンターの3台に1台を「威海産」にする目標を掲げている。
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