変革を生み出す人材をどのように処遇していくべきなのか。NTTドコモで「iモード」などの新サービスを生み出して中途入社組ながら最年少で執行役員に就き、現在はKADOKAWAの社長を務める夏野剛氏に、自らの経験も踏まえながら語ってもらった。

■特集のラインアップ
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地銀の「逆張り」デジタルバンク、生み出したふくおかFGの異端児
一度はボツも再提案で実現 ぶどう栽培に挑む三井不動産社員の執念
始まりは飲み会 公務員5000人をつなぐ異色官僚が描く未来図
ピーチ生みの親はANAトップへ 傍流での成長支えた「山ごもり」
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京都信金、「2000人対話」が育む“おせっかいバンカー”の神髄
樋口泰行氏が挑む変革「パナソニックの嫌だった社風を潰していく」
KADOKAWA夏野氏「1割の異端が起こす変革、残り9割は邪魔をするな」(今回)
日揮の脱炭素ビジネス 「Yes, and」で導く門外漢リーダー

夏野 剛(なつの・たけし)氏
夏野 剛(なつの・たけし)氏
早稲田大学政治経済学部卒業後、東京ガスに入社。米ペンシルベニア大学経営大学院(ウォートンスクール)修了。ベンチャー企業の副社長を経て、NTTドコモに入社して「iモード」などを立ち上げ、2005年に最年少で執行役員に就任。08年に退社し、慶応義塾大学の特別招へい教授を務めた。19年にドワンゴ、21年からはその親会社KADOKAWAの社長を務めている。

夏野社長はNTTドコモで「iモード」などの新サービスを立ち上げ、最年少で執行役員になりました。代表的な異端人材と言えるでしょう。NTTグループという大企業で変革を成し遂げられた秘訣はどこにあるのでしょうか。

夏野剛KADOKAWA社長(以下、夏野氏):私はまさに典型的な異端児だと思いますが、ドコモの中にガーディアン、すなわち庇護(ひご)者がいたということが大きいです。大企業の中で変革、イノベーションを起こそうとすると、既存の組織との摩擦が絶対に起こります。当時の経営トップが、私たちがやることに対して「いいじゃねえか、やらせてやれ」と言うから、かなり突っ込んで変革ができたのです。

 ところがトップが変わると「摩擦を起こしているのはお前じゃないか」とはっきり言われましたね。摩擦を起こしている人間は問題児だ、と思うか、新しい可能性にトライしているんだと捉えるか。これに尽きます。

 私に限らず、イノベーションを起こす人には、直属か斜め上の上司か、あるいは直属の上司を飛ばしたもう1段上にガーディアンがいるのです。(プレイステーションを企画した)久多良木健さんなら、(ソニー・ミュージックエンタテインメント出身でソニー・コンピュータエンタテインメントの経営を担った)丸山茂雄さんや(ソニー社長・会長を歴任した)大賀典雄さんがガーディアンでしょう。そのときの人の巡り合わせで決まってしまうのが、日本の大企業の悲劇だと思っています。

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