歩むキャリアが回り道だと思うのは、経営トップというゴールを見据えているからでもある。そんな出世街道からはずれ、自らの興味の赴くまま収益機会を求め脇道をひた走る「はぐれ者」が新たな市場を切り開く。川崎重工業社長CEO(最高経営責任者)の橋本康彦や帝人の社長CEOである内川哲茂は、その道筋で異端の流儀を身にまとい、経営トップへと上りつめた。

■特集のラインアップ
異端児に託す JR西、新事業の旗手はくすぶる若手集団
損保ジャパンが自動運転向け保険開発、支えた異端児の執念
「空調機には興味ない」 ダイキンで電力会社を興した反骨の技術者
「私を部長から降ろしてください」住友ゴム技術者、57歳からの挑戦
あえてスローな乗り物で街を元気に、関電の異端エリートが見る風景
NTT東でトマトやレタスを栽培 “左遷”が鍛えた肌感覚
前例踏襲の上司に盾突き、事業費を20億円減らした地方公務員
地銀の「逆張り」デジタルバンク、生み出したふくおかFGの異端児
一度はボツも再提案で実現 ぶどう栽培に挑む三井不動産社員の執念
始まりは飲み会 公務員5000人をつなぐ異色官僚が描く未来図
ピーチ生みの親はANAトップへ 傍流での成長支えた「山ごもり」
川崎重工、帝人…上り詰めた傍流社長が体得した「異端の流儀」(今回)
京都信金、「2000人対話」が育む“おせっかいバンカー”の神髄
樋口泰行氏が挑む変革「パナソニックの嫌だった社風を潰していく」
KADOKAWA夏野氏「1割の異端が起こす変革、残り9割は邪魔をするな」
日揮の脱炭素ビジネス 「Yes, and」で導く門外漢リーダー

川崎重工業社長CEOの橋本康彦は「傍流だからこそ自由闊達に研究できた」と振り返る(写真:竹井俊晴)
川崎重工業社長CEOの橋本康彦は「傍流だからこそ自由闊達に研究できた」と振り返る(写真:竹井俊晴)

 「ロボットをやりたい」。川崎重工社長CEOの橋本康彦は、青雲の志を抱いて1981年に同社の門をたたいた。配属されたのは油圧機械事業部。ロボットはその1組織にすぎず、川重においては「傍流中の傍流」だった。

 「東大出身やのに(同社本流の)航空でも造船でもなくロボットやりたいんか」。先輩からちょっと変わった目で見られたが、「居心地はよかった」(橋本)

 というのも、花形部門と違い目立たず小さな所帯ゆえに、皆が自分のやりたい研究開発をこつこつとやれたからだ。「ロボットは甘ちゃんやな」。組織で動く他部門からは冷ややかに見られていたが、意に介さなかった。

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