「お役所仕事」とやゆされることも少なくない、銀行などの金融機関。そんなお堅い業界の中でも、はぐれ者による変革の萌芽(ほうが)が見え始めている。上意下達の巨大組織で躍動する異端児はいかにして異能を育んでいったのか。組織は異能を尊重し、活用する文化をどう整えていったのか。国内初のスマートフォン専業のデジタル銀行を大手地銀から生み出したエリートバンカーのエピソードから学ぼう。
■特集のラインアップ
・異端児に託す JR西、新事業の旗手はくすぶる若手集団(今回)
・損保ジャパンが自動運転向け保険開発、支えた異端児の執念
・「空調機には興味ない」 ダイキンで電力会社を興した反骨の技術者
・「私を部長から降ろしてください」住友ゴム技術者、57歳からの挑戦
・あえてスローな乗り物で街を元気に、関電の異端エリートが見る風景
・NTT東でトマトやレタスを栽培 “左遷”が鍛えた肌感覚
・前例踏襲の上司に盾突き、事業費を20億円減らした地方公務員
・地銀の「逆張り」デジタルバンク、生み出したふくおかFGの異端児(今回)
・一度はボツも再提案で実現 ぶどう栽培に挑む三井不動産社員の執念
・始まりは飲み会 公務員5000人をつなぐ異色官僚が描く未来図
・ピーチ生みの親はANAトップへ 傍流での成長支えた「山ごもり」
・川崎重工、帝人…上り詰めた傍流社長が体得した「異端の流儀」
・京都信金、「2000人対話」が育む“おせっかいバンカー”の神髄
・樋口泰行氏が挑む変革「パナソニックの嫌だった社風を潰していく」
・KADOKAWA夏野氏「1割の異端が起こす変革、残り9割は邪魔をするな」
・日揮の脱炭素ビジネス 「Yes, and」で導く門外漢リーダー

2014年、福岡銀行の頭取、そして同行などを傘下に持つ持ち株会社、ふくおかフィナンシャルグループ(FFG)の社長に柴戸隆成(現会長)が就任した。バブル崩壊後の不良債権処理、経営難の地元企業の事業再生、そしてFFGの発足ーー。激動の十数年を経て、大手地銀グループのトップに就いた柴戸は、行内きっての異端児、永吉健一にある「宿題」を課した。
「10年後、銀行、金融業界がどうなっているのか見据えて、何ができるのかを考えろ。今のビジネスの延長線上でなくてもいい」
白羽の矢が立った永吉は、昔から人と同じことをするのが好きではないタイプ。大学生時代は応援のスタイルが「格好悪い」と感じた応援団を変えてやろうとあえて飛び込んだ。大学卒業後、福岡銀に入行して支店勤務だったときは、上司に稟議(りんぎ)書を通すための赤字を入れられてもその通りには直さず、あえてアレンジを上乗せ。永吉は「少しでもユニークさは出そうという小さな抵抗だった」と笑う。
5年余りの支店勤務を終えた00年、30歳手前の永吉は本部に異動して不良債権の処理や融資先の事業再生などを手掛けるタスクフォースに配属された。頭取をはじめとした経営陣と融資先などに出向き、トップ同士の議論を目の当たりにしながら、異端の遺伝子を持つ永吉は企画部門のエース格へと成長していた。
永吉はトップである柴戸からの宿題を聞き、頭をひねった。
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