異端児を使いこなせない「岩盤組織」は企業だけに限らない。柔軟性に欠ける印象が強い地方の自治体にも、異能は存在する。いかにしてはぐれ者を活用しているのか。
■特集のラインアップ
・異端児に託す JR西、新事業の旗手はくすぶる若手集団
・損保ジャパンが自動運転向け保険開発、支えた異端児の執念
・「空調機には興味ない」 ダイキンで電力会社を興した反骨の技術者
・「私を部長から降ろしてください」住友ゴム技術者、57歳からの挑戦
・あえてスローな乗り物で街を元気に、関電の異端エリートが見る風景
・NTT東でトマトやレタスを栽培 “左遷”が鍛えた肌感覚
・前例踏襲の上司に盾突き、事業費を20億円減らした地方公務員(今回)
・地銀の「逆張り」デジタルバンク、生み出したふくおかFGの異端児
・一度はボツも再提案で実現 ぶどう栽培に挑む三井不動産社員の執念
・始まりは飲み会 公務員5000人をつなぐ異色官僚が描く未来図
・ピーチ生みの親はANAトップへ 傍流での成長支えた「山ごもり」
・川崎重工、帝人…上り詰めた傍流社長が体得した「異端の流儀」
・京都信金、「2000人対話」が育む“おせっかいバンカー”の神髄
・樋口泰行氏が挑む変革「パナソニックの嫌だった社風を潰していく」
・KADOKAWA夏野氏「1割の異端が起こす変革、残り9割は邪魔をするな」
・日揮の脱炭素ビジネス 「Yes, and」で導く門外漢リーダー

瀬戸内海から内陸へ深く入り込んだ入り江に、低い山々が迫る景色が印象的な岡山県備前市。人口3万人余りの小さなまちの市役所に、一人のスーパー公務員がいる。
同前嘉浩は2017年4月から21年3月末まで働いた下水道課で、整備の在り方を大胆に見直して、事業費を20億円削減した。一般会計の当初予算が200億円規模の同市にとっては目覚ましい成果だ。ネットメディアのホルグ(横浜市)の主催する「地方公務員が本当にすごい!と思う地方公務員アワード2020」にも選ばれている。
下水管は一般的に、河川や用水路と交差する箇所では地中深くに掘り下げて下をくぐらせる必要があり、費用がかさむ。同前は、埋設するのではなく河川にかかる橋に下水管を取り付けたり、利用されなくなった用水路を廃止したりする手法で工費を大幅に削減した。ため池の一部を埋め立てて、浅い場所に下水管を通したこともあったという。
きっかけは住民からかけられた一言だった。「こんな田舎の地区に、どうして高い金をかけて整備するのか。そもそも自分は、下水道なんかつなげたくない」
下水管をつなぐと、備前市の場合は1軒当たり30万円程度の負担金が住民にはかかる。求められていない事業をこのまま進めていいのか。そもそも市の財政状況も良くない。数軒の集落に下水管を延ばすために数千万円もかかるケースを見逃したままでいいのか。
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