連結売上高は約3兆円、グループ従業員数3万人以上――。巨大組織の関西電力にあって、経営企画室という中枢を歩みながらゼロイチを成し遂げた一人の男がいる。より早く、より遠くへという乗り物の進化の歴史を疑い、ジョギングのスピードよりも低速度の自動運転車で、街の回遊性を高めると意気込む。スローな乗り物に身を委ねてみると、見慣れたはずの景色にも様々な発見があるという。
■特集のラインアップ
・異端児に託す JR西、新事業の旗手はくすぶる若手集団
・損保ジャパンが自動運転向け保険開発、支えた異端児の執念
・「空調機には興味ない」 ダイキンで電力会社を興した反骨の技術者
・「私を部長から降ろしてください」住友ゴム技術者、57歳からの挑戦
・あえてスローな乗り物で街を元気に、関電の異端エリートが見る風景(今回)
・NTT東でトマトやレタスを栽培 “左遷”が鍛えた肌感覚
・前例踏襲の上司に盾突き、事業費を20億円減らした地方公務員
・地銀の「逆張り」デジタルバンク、生み出したふくおかFGの異端児
・一度はボツも再提案で実現 ぶどう栽培に挑む三井不動産社員の執念
・始まりは飲み会 公務員5000人をつなぐ異色官僚が描く未来図
・ピーチ生みの親はANAトップへ 傍流での成長支えた「山ごもり」
・川崎重工、帝人…上り詰めた傍流社長が体得した「異端の流儀」
・京都信金、「2000人対話」が育む“おせっかいバンカー”の神髄
・樋口泰行氏が挑む変革「パナソニックの嫌だった社風を潰していく」
・KADOKAWA夏野氏「1割の異端が起こす変革、残り9割は邪魔をするな」
・日揮の脱炭素ビジネス 「Yes, and」で導く門外漢リーダー

ウエーブのかかった髪、口ひげ、日に焼けた肌、上下黒色のラフな装いに、腕には「アップルウオッチ」。手渡された名刺に目を落とすと、肩書には「座長」とある。
世間が抱く大手電力会社勤めのイメージにはおよそそぐわないが、嶋田悠介(38歳)はれっきとした関西電力の社員。2020年からは自身がけん引してきたモビリティーサービスの開発が起点の子会社ゲキダンイイノ(大阪市)を率いている。
開発を進めているのは、時速5km以下と、人の歩く速度に合わせて動く自動運転車。ゴミ収集の作業員が収集車にピョンと飛び乗るところから着想を得た。
好きなところで乗り、好きなところで降りることができる。「より遠くにより速く行ける方向で進化してきた既存の乗り物とは正反対のコンセプト」(嶋田)。スローな乗車体験を通じて、普段は見落とすような景色を再発見してもらうことに主眼を置く。
乗り物というよりは、動く歩道をイメージした方が近いだろうか。宇都宮市で大谷石の採掘場跡地をめぐるツアーに採用されたり、神戸市で須磨海岸を走ったりといった実績があり、街の回遊性を高めて地域活性化につながると期待を集めている。
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