SOMPOホールディングス(HD)は7月19日、自動運転システム開発のティアフォー(名古屋市)に100億円を追加出資したと発表した。20年までに約100億円の出資を済ませており、累計の投資額は約200億円に上る。SOMPOHDは中期経営計画の中で自動運転関連ビジネスを中長期的な収益拡大に向けた戦略事業として位置づける。22年2月には中核会社の損害保険ジャパンが自動運転車専用の保険を開発した。損保会社の稼ぎ頭である自動車保険の概念やビジネスモデルを変えていく可能性のある自動運転分野に、SOMPOHDが巨額を投じて注力し始めた。そのきっかけは、一人の「異端児」を抜きにして語れない。
■特集のラインアップ
・異端児に託す JR西、新事業の旗手はくすぶる若手集団
・損保ジャパンが自動運転向け保険開発、支えた異端児の執念(今回)
・「空調機には興味ない」 ダイキンで電力会社を興した反骨の技術者
・「私を部長から降ろしてください」住友ゴム技術者、57歳からの挑戦
・あえてスローな乗り物で街を元気に、関電の異端エリートが見る風景
・NTT東でトマトやレタスを栽培 “左遷”が鍛えた肌感覚
・前例踏襲の上司に盾突き、事業費を20億円減らした地方公務員
・地銀の「逆張り」デジタルバンク、生み出したふくおかFGの異端児
・一度はボツも再提案で実現 ぶどう栽培に挑む三井不動産社員の執念
・始まりは飲み会 公務員5000人をつなぐ異色官僚が描く未来図
・ピーチ生みの親はANAトップへ 傍流での成長支えた「山ごもり」
・川崎重工、帝人…上り詰めた傍流社長が体得した「異端の流儀」
・京都信金、「2000人対話」が育む“おせっかいバンカー”の神髄
・樋口泰行氏が挑む変革「パナソニックの嫌だった社風を潰していく」
・KADOKAWA夏野氏「1割の異端が起こす変革、残り9割は邪魔をするな」
・日揮の脱炭素ビジネス 「Yes, and」で導く門外漢リーダー

遡ること6年前、損保ジャパンの新海正史は新たな業務を目の前に腕が鳴った。1998年、日本火災海上保険(現・損保ジャパン)に入社した新海は岐阜を振り出しに東京、栃木と日本各地を渡り歩きながら、一貫して自動車保険の営業を担ってきた。入社19年目の2016年に初めて本社勤務となり、業務として与えられたのは、自動車メーカーと協業し、技術革新に合わせた新たな保険商品やビジネスモデルを生み出すことだった。
当時はトヨタ自動車が通信機器を標準搭載した「コネクテッドカー」関連で、米マイクロソフトと組んで新会社を設立するなど、自動車の先端技術や先進的なサービスを総称する「CASE(コネクテッド、自動運転、シェアリング、電動化)」の中でも「C」の普及が間近と目されている時期だった。
クルマが通信機能を備えれば、運転手一人ひとりの走り方などに合わせて料率を変化させるなど、新たな自動車保険の形が生まれていくかもしれない。新海はコネクテッドカー時代に合ったビジネスを模索すべく、自動車メーカーへの接触を図るが、相手からはつれない対応を受けた。
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