若者たちがWeb3の世界で活躍するには?

佐藤 未来の若者たちはWeb3で活躍できるのでしょうか。「国ガチャ」だと言う若い学生たちに「やりたいことは?」と聞くと、「お金をたくさんもうけるよりも安定したい」と。具体的な夢を抱いていない人たちが多くいるように思います。でも、これからWeb3に向かう上で、プロトコルの開発者になればものすごく活躍できるわけですよ。もっとそこに夢を抱かせるような政策があればいいのにな、と。

千野 おそらく政策論に行く前に、そもそもWeb3の新しい経済モデルについて、まだ十分に理解されていないのでは。まだまだ日本では、Web3は怪しい、仮想通貨もギャンブルや投資商材みたいなイメージです。

 ただ、Web3は個人の自由、分散型という世界観ですから、基本的に誰も守ってくれないのも事実です。会社に入ったら、「先輩がOJT(職場内訓練)で手取り足取り教えてくれます」みたいな世界ではないです。弱肉強食にもなりかねない。そんな中でITリテラシーが低いと犯罪に巻き込まれたり、お金をだまし取られたりする危険性もあります。そこをどうするか、特に若者世代をWeb3的な人材にどのように育て上げるかは、非常に重い課題ですね。

 今の日本では、小4くらいになると塾に通って中学受験して、中高一貫校に入学して大学受験をして、一流企業に入るというルートが親の中にはあります。でも、これはまさに、Web3ではない人材をどんどんつくろうとしているわけですよね。かくいう私も子どもは塾に行かせて、中高一貫校に入れたというオチもあるのですが(笑)。保護者としては難しい問題です。

佐藤 Web3になるとそれぞれのプロトコル、ダップス、思想、ビジョンが多様化し、若い人たちは自由に選択できるようになります。やはり教育システム上、多様性やユニークさを互いにリスペクトできる社会をつくらないといけませんね。万人に受ける1つのテンプレートの上に乗ってしまう人は、なかなか選択できないですよね。

 これからWeb3のなかで基盤となるブロックチェーンは、そもそもクロスボーダーじゃないですか。国境を越えたそれぞれのプロトコルに入っていって、思想や考えに同意して、クロスボーダーに稼ぐ。ただ、生身の人間として日本で暮らしている以上、日本に税金は納めないといけない。Web3を1つの大きな経済というエコシステムで考えるのであれば、日本はまず税制を再検討して、改正できるのであれば一刻も早く進めるべきだと思います。

千野 ええ。Web3のDAOは従来の多国籍企業やグローバル企業と言われたものを超えた存在だと思うんですね。要は、多国籍企業は国籍が前提となっていますが、DAOでは国籍は関係なく、ただインターネット上に存在する組織。

 ただし、DAOで働いたとしても、やはり生身の人間である以上、どこかに住んで生活をしなきゃいけない。その点、日本は住みやすいし、比較的安全だし、観光資源も豊かで、おいしい料理とお酒もある。僕は日本に住んでもいいと思う。問題は、日本の社会の閉鎖性と多様性のなさ、言語の問題、税金に尽きるんじゃないかなと思います。

佐藤 1周回って、どうして日本に住んでいるんだろうと考えると、住み心地がとても良いからです。水は蛇口をひねれば飲めるし、食事もとてもおいしいですしね。例えば、発想の転換で、「こんなに素晴らしい国なんですよ」というところを強みに、新しいビジョンとその目的を明らかにして、ジャパンオリジンのトークンエコノミーをつくったら、案外ズドンとはまるかもしれない。ひょっとしたら、まだまだ日本はいけるんじゃないかなと。

「課題に今取り組めば、ひょっとしたら、まだ日本はいけるのではないか」と語り合う佐藤さん(左)と千野さん
「課題に今取り組めば、ひょっとしたら、まだ日本はいけるのではないか」と語り合う佐藤さん(左)と千野さん
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文/三浦香代子 構成/雨宮百子(日経BOOKプラス編集部) 写真/小野さやか

日経BOOKプラス 2022年7月27日付の記事を転載]

出遅れた我々に、復活の道はあるのか?

DAO(分散型自律組織)、NFT(非代替性トークン)、ステーブルコインほか、仮想通貨とWeb3をめぐる最新の動向を解説。米大手暗号資産取引所の日本代表だから語れる、金融とITの未来!

千野剛司(著)/日本経済新聞出版/1980円(税込み)
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