日本がWeb3で勝つ秘策は「カイゼン」
すでに出遅れている日本が、Web3で他国に勝てるのでしょうか。
渡辺 今後のブロックチェーン領域でビジネス的に勝つためには、イノベーターである必要はないんですよ。エコシステム内の主要なネットワークであるレイヤー1ブロックチェーンだけを見ても、もうソラナ、アバランチ、バイナンス、イーサリアムとかたくさんあります。我々の強みは、それを改善する速度と粒度。
でも、実はゼロから開発するよりもラクです。我々がつくっているアスターネットワークがレイヤー1ブロックチェーンとして成長するために、他のブロックチェーンのデータを分析・解析して、戦略を立てています。そして、「今週この数字を達成できたけれど、この数字はできていない」「ここにもうちょっと予算を割くべきでは」といった課題を毎日ディスカッションしています。こういうところは、日本人の得意分野。
イノベーターとしては弱いけれど、フォロワーとして「カイゼン」して、結局イノベーターよりもいいものをつくるのは上手です。車でも、トヨタは故障せずに長く走れる、安くする、とカイゼンを重ねた結果、世界販売台数で1位を取った。そういうプレーは日本人が強いですよ。
特にWeb3の業界は、これから伸びていくから、やりやすいのですか。
渡辺 いや、伸びているからではなく、Web2と違って全部データが取れるからなんです。すべてオープンです。
千野 今までの企業の発想は囲い込みですよね。何か技術を開発したら、それを特許申請して囲い込む、先行者利益を得るというモデルでしたが、Web3やブロックチェーンの発想は基本的にすべてオープン、透明性があるんですよね。
渡辺 そうです。ただ、いくらデータがオープンになっている、そこから全部、数字と戦略を学べるといっても、みんなが成功できるわけではありません。なぜ分散型取引所のユニスワップやレイヤー1ブロックチェーンのソラナが伸びたのか、そこをしっかり言語化する、仮説を立てられる人は世界でも少ない。後発だからできる戦い方もあります。
文/三浦香代子 構成/雨宮百子(日経BOOKプラス編集部) 写真/小野さやか
[日経BOOKプラス 2022年7月22日付の記事を転載]
DAO(分散型自律組織)、NFT(非代替性トークン)、ステーブルコインほか、仮想通貨とWeb3.0をめぐる最新の動向を解説。米大手暗号資産取引所の日本代表だから語れる、金融とITの未来!
千野剛司(著)/日本経済新聞出版/1980円(税込み)
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