柔軟な発想ができないと道を誤る

渡辺 Web3もそうですが、新しい技術が出てきたときに柔軟な発想ができないと、道を誤るんですよね。例えばパーソナルコンピュータが出てきたときに、IBMの社長が、「パーソナルコンピュータは世界で売れても5台ぐらいだ」と言ったとか、アイフォーンが発売されたときに、ひろゆきさんが「1カ月後にアイフォーンを使っている人なんていない」と言ったとか。

 僕は、新技術の本質を見極めるのが大事だと思っています。例えば、アイフォーンを「電話機」として考えると、ガラケーのほうが便利ですが、アイフォーンにはGPSやカメラ、アプリケーションストアがあっていろんな使い方ができるじゃないですか。

 それと同じで、ブロックチェーンが新しくできることは何かというと、ユニバーサルな価値の移転、二重支払いの防止、取引の信頼コストを下げること。これは全部パブリックブロックチェーン(誰でも取引の承認に参加できるブロックチェーン)の特性なんですね。

どういうことですか。

渡辺 ブロックチェーンを使うことで、価値の複製と二重支払いがオンラインでできなくなりました。NFT(非代替性トークン)にしてもビットコインにしても、誰でもつくれるアカウントさえあれば、“Peer to Peer”(個人同士の取引)で数分で価値を送ることができます。

 今まで大企業や国に頼らざるを得なかった取引が、ビットコインやイーサリアムを信用すること、もしくはそれらを信用している人を信用することで成り立つようになってきている。信用によって取引コストが低下しているのです。

 今、パブリックブロックチェーンを使わない人たちは、「遅い」「プライバシーがない」という理由です。でも、それは技術の問題だからいつかは解決するし、パブリックブロックチェーンの技術的な課題と向き合い続けたほうが、将来的に明るいんじゃないかなと思います。アメリカがすごいなと思うのは、VISAやテスラ、ツイッターといった大企業がパブリックブロックチェーンに取り組もうとしているところですね。

千野 技術の本質的なところを見誤ると、結果が大変になると。今後は、特定の企業などが参加者を管理するようなプライベートブロックチェーンではなく、誰もが参加可能なパブリックブロックチェーンが重要になりますね。それでも日本企業で実用に向けたブロックチェーンの話題が盛り上がらないのは、基本的にパブリックブロックチェーンという発想がないから。

 どうしてかというと、やっぱり自分たちの経済圏を守るため。要は新しい技術っていうのは、彼らにとっては脅威なんですよ。プライベートブロックチェーンを前提とすると「今まで通り○○ポイントでいいじゃん」となりますよね。

「今後はパブリックブロックチェーンが重要になります」と語る千野さん(左)
「今後はパブリックブロックチェーンが重要になります」と語る千野さん(左)
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渡辺 アメリカでプライベートブロックチェーンに力を入れようとしている会社は、僕は知らないですね。

千野 そうすると、日本はどうしたらいいんでしょうね。別の対談でも悲観的な内容になってしまったんですが。日本のWeb3に未来はありますか。

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