前回はメタバースの世界を俯瞰(ふかん)し、人間拡張によってそのポテンシャルが開花することを解説した。今回は実例を挙げながら、メタバースの現在地と可能性を考察してみたい。メタバースが進化していく道筋が見えてくるだろう。

メタバースの進展に必要なポイントとは

 現在のメタバースは、ゲームなどのエンターテインメント(エンタメ)業界が中心になって進んでいる。仮想現実(VR)やアバター(分身)などメタバースの基本的な要素との親和性が非常に高いからだ。

 例えば、現時点でメタバースに最も近いサービスと言われているFortnite(フォートナイト)やRoblox(ロブロックス)、The Sandbox(ザ・サンドボックス)などのプラットフォームは、いずれもオンラインゲーム関連である。

 米国の大手タレントエージェンシーとデジタルメディア会社が2022年5月に13~60歳のインターネットユーザー約5000人を対象に行った調査によると、回答者の約半数(48%)がメタバースについて「まったく知らない」と答えた。ただ矛盾するようだが、13~56歳の68%はFortniteやRobloxなどを通して “没入感(immersion)”を体験したことがあると答えている。

 米国のネットユーザーに関していえば、ゲームを楽しむことを通じて自分が知らないうちにメタバースを体験している人が多いということだ。この流れは今後、米国のみならず日本を含めた世界中に広がっていくはずだ。

 前回も述べたように、メタバースがゲームなどのエンタメ業界のみで進化・拡大するうちは、一部のマニアに向けた娯楽にとどまってしまう。メタバースで実現される仮想世界が現実世界に伍(ご)するもう1つの世界足り得るには、エンタメ以外の「人間のあらゆる営み」がメタバースで経験できる必要がある。人間のあらゆる営みとは、例えば遊ぶこと、買うこと、学ぶこと、休むことなどだ。より身体性を伴った現実世界に近い領域での応用が進んでいくことが求められる。前述のプラットフォーマーも、その動きを具体化しつつある。

 Fortniteは、NFL(米国プロフットボール)のラストゲームに合わせてFortnite上にスタジアムを建設、独自のファンイベントを開催した。現実世界のイベントとのコラボレーションである。Robloxは次世代のプログラミング教材として注目され、学習の場としてグローバルで活用が進んでいる。The SandboxはNFT(非代替性トークン)を活用し、デジタルの土地に唯一性・所有権という価値を付与するなど、NFTを活用した経済圏の設立を目指している。

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