ベイカレント・コンサルティングが、DXのリアルとその先に迫る本シリーズ、第2弾のテーマはメタバースだ。様々な企業とのディスカションを重ねてきたベイカレントがメタバースの世界を俯瞰(ふかん)し、そのシンギュラリティー(技術的特異点)を解き明かす。

メタバースには仮想と現実の相互作用が不可欠

 「メタバース」はもはやバズワードになったと言ってよいだろう。

 ビジネスの世界で「メタバース」という言葉を普通に見聞きするようになった。メディアでの取り上げ方も同様で、トレンドの最先端に躍り出たかのような活況だ。

 メタバースは一般に「インターネット上の3D仮想空間」などと理解されている。日本でも、メタバースを冠するサービスが数多くリリースされている。しかし、各サービスをのぞいてみると実際にはまだ活況とは言い難い状況であり、サービスを提供する側の期待が先行している感が否めない。

 今、このことの是非を語っても意味がない。新しいテクノロジーが生まれ、高度化する社会ニーズに対応しようとするイノベーションの黎明(れいめい)期には珍しくないからだ。重要なのは、メタバースがもたらす価値は何か、その先にどのような社会があるのか、議論を尽くしていくことだろう。本稿がその議論の一助になれば幸いである。

 ベイカレントでは社内や多くのクライアントとディスカッションを重ねる中で、メタバースがもたらす未来は「現実と仮想とが相互作用する世界」であると位置づけている。現実世界の人間が仮想世界において、現実にとらわれることのない世界を創造する一方で、仮想世界で得た学びや体験を現実世界へ転写する。これを相互に繰り返すことで、現実世界と仮想世界をシームレスに生きることができるようになる。

 メタバースを構成する「仮想」と「現実」という2つの世界の中で、今、世の中で取り組まれているのは、仮想世界の創造が中心だ。たしかに仮想世界では、現実にとらわれることなく自分の理想とする世界やもう1人の自分を創造できる。しかし、その影響が仮想世界に限られていては、一部の人たちが熱狂する空間にとどまってしまうだろう。2000年代に話題になったオンラインゲーム「Second Life」はそんな一部の人だけの仮想世界のはしりだった。

 ここで根本的な疑問を抱く人は多いかもしれない。多くの人々が仮想世界を現実世界と同様に過ごすようになる“メタバース・シンギュラリティー”は果たして到来するのか。そして実際に我々の前に訪れるのか、という疑問である。

 その疑問に対するベイカレントの答えはYesだ。しかし、多くの人々が仮想世界を有効に活用するためには、すべての人間が存在している現実世界との相互作用が欠かせない。そして、そのキーテクノロジーになるのが「人間拡張」(Human Augmentation)なのだ。

(C)2022. BayCurrent Consulting, Inc.
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