昨今、多くの企業が取り組むデジタルトランスフォーメーション(DX)。そのキーマンとなるのがCDO(Chief Digital Officer=最高デジタル責任者)だ。CEO(最高経営責任者)やCOO(最高執行責任者)、CFO(最高財務責任者)は読者の皆さんの多くが見聞きする言葉で、その肩書を持つ人物がどのような立場で何をすべき役職なのかを理解しているだろう。

 一方、聞き慣れないCDOとは何か。文字通り企業におけるデジタル変革の最高責任者であり、DXを推進する役割を担う。このように聞いて皆さんはどのような人物像を思い描くだろうか。デジタルにたけたテクノロジーに強い人物だろうか。新たな商品やサービスなどを生み出すイノベーションに強い人物だろうか。または、企業全体を変革していく人物だろうか。おそらく、人によって想像する人物像が異なると思う。今回はそんなCDOの経歴をヒントに求められる役割の多様化に迫っていきたい。

 まずは、どれくらいの企業がCDOを置いているのかを知ろう。先端企業の実態を知るべく、ベイカレント・コンサルティングは2022年6月に独自調査を実施した。日経平均株価を構成する日本の主要上場企業225社を対象とした「日経225」の企業のホームページなどから、取締役や執行役員にCDOを置いているかを調べた。結果、225社の2割に当たる42社がCDOを置いていた。

 一見すると少ない印象を受けるかもしれない。だが、225社にはDXの重要度が特定の機能に限定され、機能横断で責任を持つCDOの必要性が低い業種もあれば、サイバーエージェントや楽天グループのように、そもそもデジタル化が進んでいるIT企業も多い。そうした企業ではCDOを置かない場合もあるようだ。また、各業界のリーディングカンパニーを支援しているベイカレントの感覚からすると、前述のような業界を除けば、ほとんどの先端企業がCDOに相当する担当役員を設置している。

 では、企業におけるCDOの経歴はどう分類できるのか。それをグラフ化したものが以下になる。

【調査概要】2022年6月にベイカレントが実施。日経平均株価を構成する225社のホームページなどからCDOとそれに準じる役職の有無や経歴を調査。(注)CDO就任が入社5年未満の人物は「外部招へい」と区分とした (C)2022. BayCurrent Consulting, Inc.
【調査概要】2022年6月にベイカレントが実施。日経平均株価を構成する225社のホームページなどからCDOとそれに準じる役職の有無や経歴を調査。(注)CDO就任が入社5年未満の人物は「外部招へい」と区分とした (C)2022. BayCurrent Consulting, Inc.
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 経歴については、社内からの登用か社外からの招へいか、ビジネス部門を渡り歩いてきた人かIT企業・IT部門を渡り歩いてきた人か、で分類している。なお、ここでは入社5年以上経過しての就任は社内登用としてカウントしている。

 結果を見ると、約半数が社内のビジネス部門を経験した人物がCDOに就任していることが分かる。さらにこのケースで特徴的なのが、CDOの役職が常務以上と、上位職が多いという点だ。その企業のビジネスも組織文化も熟知した、まさに重鎮ともいえるような人物である。そして次に多いのがIT企業や他企業のIT部門に勤めていた人物をCDOとして招へいするケース。このケースでは、米IBMや米グーグルといったBig Techカンパニーから招かれていることが多い。

 この結果は皆さんの目にどう映っただろうか。予想通り、いや意外だった、両方いるのではないだろうか。おそらくCDOという役割が誕生した当初から、その存在を知っていた読者にとっては意外な結果になっていると思う。というのも、CDOに求められる役割が近年変わってきており、それに応じてCDOの経歴も変化してきているからだ。

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