「クリエーターエコノミー元年」と呼ばれた2021年から約2年。その市場は国境を越えて順調に拡大している。3年目を迎えた今、このバズワードは単なる一過性のブームなのか、それとも確固たる新興市場なのか。今回からはクリエーターエコノミーをテーマに、その真価を見定めたい。まずは国内外におけるクリエーターエコノミーの現状とマーケットへの影響を改めて探ってみる。

23年には市場規模が29兆円に
クリエーターエコノミーとは、企業ではない個人が映像や音楽などのコンテンツを制作し、それらを販売したり広告での収入を獲得したりすることで収益を得る新しい経済圏を指す言葉だ。企業経営者からすると「自社のビジネスに関係ない」と見えるかもしれないが、そう結論づけるのは尚早だ。
米調査会社のインフルエンサー・マーケティング・ハブの推計によると、クリエーターエコノミーのグローバル市場規模は、2022年で1640億ドル(約22.3兆円)、23年には2110億ドル(約28.7兆円)に達すると予測されている。同市場に関わる人口も現時点で世界総人口の約23%、ほぼ4人に1人まで達していると見られている。
クリエーターエコノミーの歩みを振り返ってみると、そもそもの発端は「クリエーターエコノミーの教祖」と呼ばれるベンチャーキャピタリスト、リー・ジン氏(Li Jin)が19年10月に自らのブログで公開した“The Passion Economy and the Future of Work”の記事とされている。
世界中のインフルエンサーと人脈を持つ米国の大物ベンチャーキャピタルパートナーである彼女が「新たなプラットフォームでは誰もが独自のスキルで稼ぐことができる。個人のクリエーティブ性を収益化できる方法が多く生まれている」と発信し、グローバルに関心を集めた。
さらに彼女は「100人の忠実なファンがいればクリエーターとして生計が立てられる」と、数万人単位のフォロワーが必要といわれたそれまでよりも、多くの人がクリエーターになれる時代に変わりつつあることを示唆し、新たな経済圏の到来を予感させた。
実際、クリエーターエコノミー市場は順調に成長している。ただし、その歩みは主に米国を舞台に曲折を経てきたのだ。
21年は、ビッグテックの投資を中心とした追い風が吹いた。米ツイッターがニュースレター配信サービスのレビューを買収し、1月にツイッター上でクリエーターがニュース配信できる機能を追加。米マイクロソフトは3月に「リンクトイン」でクリエーターモードの提供を開始した。一方、米グーグルは、5月に「YouTube ショート」のクリエーターに対し1億ドル(約136億円)の収益分配を決定。米メタ(旧フェイスブック)も7月、22年末までに自社SNS(交流サイト)上で活動するクリエーターに総額10億ドル(約1360億円)超の報酬を配分することを発表した。
Powered by リゾーム?