新型コロナウイルスの世界的拡大で2021年に延期され、多くの会場で無観客開催となった東京五輪・パラリンピックからまもなく1年を迎える。海外から選手・関係者・観光客を迎えるため、駅のバリアフリー化や街の多言語化表示が進んだ。その一方で、恒久施設の赤字といった課題を残している。大会のレガシーとは何だったのか。大会組織委員会の「街づくり・持続可能性委員会」で委員長を務めた三菱総合研究所理事長の小宮山宏氏に聞いた。

■連載予定 ※内容は予告なく変更する場合があります
(1)東京都心でも人口流出 オフィス過剰「2023年問題」は防げるか
(2)映画ロケに都市計画、複雑都市「TOKYOモデル」が世界で売れる
(3)経済規模はオランダ以上、データで見る東京の強さ
(4)東京をユニコーンの“揺りかご”に 起業の街への巻き返し
(5)東京に攻め込む海外ユニコーン、未開拓の巨大市場が魅力
(6)「人口減に合わせた再開発を」 西川弘典東急不動産HD社長
(7)「東京の“武器”、リニアを生かした街づくり」 市川宏雄・明治大学名誉教授
(8)「それでも東京は買い」の真意 ブラックストーン日本・橘田大輔代表
(9)「見えずとも確かに残った五輪レガシー」 小宮山宏・三菱総研理事長
(10)「消滅可能性都市からのリベンジ」 高野之夫・豊島区長
(11)「テレワーク定着もオフィス床は減らず」 トーセイ・山口誠一郎社長

小宮山宏(こみやま・ひろし)氏
小宮山宏(こみやま・ひろし)氏
三菱総合研究所理事長、元東京大学総長 1944年栃木県生まれ。72年東京大学大学院博士課程修了。88年同大教授。2005~09年に東京大学総長を務めた。09年から三菱総合研究所理事長。東京五輪・パラリンピックの大会組織委員会で「街づくり・持続可能性委員会」の委員長を務めた。(写真=都築雅人)

1年延期して2021年夏に開催された東京五輪・パラリンピック(以下、東京2020大会)からまもなく1年を迎えます。小宮山先生は東京2020大会を「21世紀のサステナブル(持続可能)な社会を描き出すショーケースにしよう」と提言されてきました。狙いと手応えについて教えてください。

小宮山宏・三菱総合研究所理事長(以下、小宮山氏):大会組織委員会(22年6月で解散)内の5つあった委員会のうち「街づくり・持続可能性委員会」で委員長を務めました。大会開催に向けて、自治体や団体に参画してもらうアクション、次世代に継承していくレガシーを練る上で提言したのは、21世紀のサステナブルな地球と人間のあり方を示すことでした。

 お店のショーケースを見ると、その店が何だか分かりますよね。同じようにサステナブルを「ショーケース」の事例で示そうと考えたわけです。そういう意味では、あらかた「できた」と思っています。

取り組みには、金・銀・銅メダルに必要な金属を使用済みの小型家電から集める「都市鉱山からつくる!みんなのメダルプロジェクト」などがありました。振り返ってみていかがですか。

小宮山氏:20世紀というのは、地下資源を掘って人間が使えるように変換してきた時代でした。金・銀・銅もそうですし、鉄だったら鉄鉱石を掘って鉄にして使いました。金属はなくならないので、人類はすでに相当量の金属を地上にためたことになります。21世紀もまだしばらくは掘るけれど、地上にある分で回す世の中にできるし、そうならなければいけない。そこで一番象徴的なものとして、金・銀・銅あわせて約5000個のメダルを、使用済みの小型家電などから金属を回収してつくったのです。

 資源の面ではプラスチックと木材の問題もあります。表彰台を使用済みプラスチックでつくった「みんなの表彰台プロジェクト」や、選手村の施設(ビレッジプラザ)を日本全国の自治体から無償で借り受けた木材で建てる「みんなで作る選手村ビレッジプラザ」がありました。そういう意味では、金属・プラスチック・木材と、重要な物質はリサイクルできるということを示せたと思います。

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この記事はシリーズ「岐路に立つTOKYO ~進化か、衰退か~」に収容されています。WATCHすると、トップページやマイページで新たな記事の配信が確認できるほか、スマートフォン向けアプリでも記事更新の通知を受け取ることができます。