人口減時代の再開発はどう変わるのか。東急不動産ホールディングスの西川弘典社長に、主要拠点である渋谷の強みや魅力づくと併せ、見解を聞いた。
■連載予定 ※内容は予告なく変更する場合があります
(1)東京都心でも人口流出 オフィス過剰「2023年問題」は防げるか
(2)映画ロケに都市計画、複雑都市「TOKYOモデル」が世界で売れる
(3)経済規模はオランダ以上、データで見る東京の強さ
(4)東京をユニコーンの“揺りかご”に 起業の街への巻き返し
(5)東京に攻め込む海外ユニコーン、未開拓の巨大市場が魅力
(6)「人口減に合わせた再開発を」西川弘典東急不動産HD社長
(7)「それでも東京は買い」の真偽、ブラックストーン日本・橘田大輔代表
(8)市川宏雄・明治大学名誉教授が語る「リニア開通後の東京」
(9)「環境意識の変革が五輪のレガシー」、小宮山宏東京大学元総長
(10)「消滅可能性都市からのリベンジ」、高野之夫豊島区長
(11)「テレワーク定着もオフィス床は減らず」、トーセイ山口誠一郎社長

不動産市況の現状認識を教えてください。
西川弘典東急不動産ホールディングス社長(以下、西川氏):渋谷ではそれほど悲観的な材料は出ていないというのが正直なところです。オフィスについては、幅広い年代層の人々を引き付ける渋谷という街の持つ魅力がIT企業を引き付けています。その集積度が増せば増すほどIT企業の誘致にプラスに働くという好循環が起きています。2023年11月の竣工を目指す渋谷駅桜丘口地区再開発についても、テナント募集のスピード感や賃料水準は当初の想定を上回っています。
都心の商業施設については、だいぶ売り上げが回復してきています。今後はインバウンドの皆さんがどれだけ戻ってきてくれるかどうか。新型コロナウイルス禍前よりも受け入れ態勢や魅力度は向上していますし、コストも抑えているので、同じ数が来てくれただけでも、一段の成長ができる可能性があります。
テレワークの定着でオフィス需要は減りませんか。
西川氏:オフィス需要が単純に減るという話になってはいません。一番の変化はデジタル化とそれに伴う働き方改革です。当初はオフィス不要論が語られたこともありますが、それは極論で、その後は「直接顔を合わせてコミュニケーションを取らないとやっぱり駄目だよね」という流れになってきました。米大手IT企業が、コロナ禍以前から「コミュニケーションを取るためのオフィス」「テレワーク前提の本社オフィス」をつくっていた流れが、国内でもコロナ禍によって早く到来したというのが実情なのでしょう。ここ(東急不HD本社)もフリーアドレス制を採用しているほか、社員が集まってコミュニケーションを取れる場を多く用意しています。今のオフィス市場では、一言で言ってしまえば、「行きたくなるオフィス」にどうやってつくり変えていくかが大きなポイントになっています。
過去、渋谷は「ビットバレー」と呼ばれました。
西川氏:あの頃は「渋谷で起業すること」が盛り上がりました。ただ、残念ながら十分な大規模ビルを供給できず、成長したIT企業が他の街に出ていった事例がありました。渋谷の歴史の中でもちょっと競争力を失っていた時期だと思います。その後の渋谷には大規模ビルである(渋谷)ヒカリエ、ストリーム、ソラスタ、スクランブルスクエア、フクラスができ、他のエリアから戻るケースや、エリア内で(入居するオフィスを)グレードアップするケースが出てきました。今では、ビットバレーの頃以上の注目をIT業界からいただいています。
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