鉄道のターミナル駅を中心に広がる東京の街並みは、海外では異質だ。近年は巨額の製作費を見込んで海外映画のロケ誘致の取り組みも進む。開発事業者も、駅を中心とした街づくりの知見を世界に輸出し始めている。

■連載予定 ※内容は予告なく変更する場合があります
(1)東京都心でも人口流出 オフィス過剰「2023年問題」は防げるか
(2)映画ロケに都市計画、複雑都市「TOKYOモデル」が世界で売れる
(3)都市ランキング世界3位 東京の強みはどこに?
(4)東京をユニコーンの“揺りかご”、起業の街への巻き返し
(5)東京に攻め込む海外ユニコーン、未開拓の巨大市場を開拓
(6)「人口減に合わせた街づくりを」、西川弘典東急不動産HD社長
(7)「それでも東京は買い」の真偽、ブラックストーン日本・橘田大輔代表
(8)市川宏雄・明治大学名誉教授が語る「リニア開通後の東京」
(9)「環境意識の変革が五輪のレガシー」、小宮山宏東京大学元総長
(10)「消滅可能性都市からのリベンジ」、高野之夫豊島区長
(11)「テレワーク定着もオフィス床は減らず」、トーセイ山口誠一郎社長

栃木県足利市に設置された渋谷のスクランブル交差点の実物大のロケセット。国内外からドラマやミュージックビデオの撮影の問い合わせが絶えない(写真:あしかがフィルムコミッション提供)
栃木県足利市に設置された渋谷のスクランブル交差点の実物大のロケセット。国内外からドラマやミュージックビデオの撮影の問い合わせが絶えない(写真:あしかがフィルムコミッション提供)

 「映画の撮影用に、大規模なロケセットを組める場所を探している」

 2019年5月、栃木県足利市の担当職員は、東京の美術制作会社からそんな相談を受けた。広さを確認すると約2ヘクタールと、「聞いたことがないスケールだった」(あしかがフィルムコミッション・相澤直人室長)。海外映画を含む3本の作品を撮る予定だといい、河川敷の市有地を有償で貸し出した。工事前に図面を受け取って驚いた。造ろうとしていたのは渋谷のスクランブル交差点の実物大のロケセットだったのだ。

日本国内で撮影された「唐人街探偵 東京MISSION」の一場面(C)WANDA MEDIA CO.,LTD. AS ONE PICTURES(BEIJING)CO.,LTD.CHINA FILM CO.,LTD “DETECTIVE CHINATOWN3”〔写真:「唐人街探偵 東京MISSION」(発売元:カルチュア・パブリッシャーズ)〕
日本国内で撮影された「唐人街探偵 東京MISSION」の一場面(C)WANDA MEDIA CO.,LTD. AS ONE PICTURES(BEIJING)CO.,LTD.CHINA FILM CO.,LTD “DETECTIVE CHINATOWN3”〔写真:「唐人街探偵 東京MISSION」(発売元:カルチュア・パブリッシャーズ)〕

 撮影された映画は、中国の人気シリーズ「唐人街探偵」の3作目。東京を舞台に妻夫木聡さんや長澤まさみさんも出演した。海外作品のロケを国内に誘致するために内閣府が行った実証調査の対象作品で、報告書によると国内だけで約30億円の直接経済効果があったという。

 ロケセットは撮影後に取り壊す予定だったが、足利市がスタジオとして誘致し、20年6月に「足利スクランブルシティスタジオ」を開設した。以来、ドラマやミュージックビデオの撮影の問い合わせが絶えない。

 足利市で東京を「再現」した背景には、東京都では道路などの使用許可が下りず、リアルな撮影が難しいという現状がある。都の外郭団体でロケ誘致を担う東京ロケーションボックスの田中克典・担当課長は、「東京は世界で最も映画が撮りにくい都市だと思われてしまっている」と説明する。

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この記事はシリーズ「岐路に立つTOKYO ~進化か、衰退か~」に収容されています。WATCHすると、トップページやマイページで新たな記事の配信が確認できるほか、スマートフォン向けアプリでも記事更新の通知を受け取ることができます。