コロナ禍で定着したテレワークが、一等地のオフィスビル需要に影を落とす。都内各所の再開発によりビルが大量供給される「2023年問題」が目前だ。山積する課題。東京は新しい需要を喚起してさらなる成長ができるだろうか。

■連載予定 ※内容は予告なく変更する場合があります
(1)東京都心でも人口流出 オフィス過剰「2023年問題」は防げるか
(2)TOKYOを世界に売り出せ、街が培った知見で世界中を魅了
(3)都市ランキング世界3位 東京の強みはどこに?
(4)東京をユニコーンの“揺りかご”に 起業の街への巻き返し
(5)東京に攻め込む海外ユニコーン 未開拓の巨大市場を開拓
(6)「人口減に合わせた街づくりを」、西川弘典東急不動産HD社長
(7)「それでも東京は買い」の真偽、ブラックストーン日本・橘田大輔代表
(8)市川宏雄・明治大学名誉教授が語る「リニア開通後の東京」
(9)「環境意識の変革が五輪のレガシー」、小宮山宏東京大学元総長
(10)「消滅可能性都市からのリベンジ」、高野之夫豊島区長
(11)「テレワーク定着もオフィス床は減らず」、トーセイ山口誠一郎社長

東京駅周辺では大規模再開発が相次ぐ(東京ミッドタウン八重洲は右奥の高層ビル)(写真:竹井俊晴)
東京駅周辺では大規模再開発が相次ぐ(東京ミッドタウン八重洲は右奥の高層ビル)(写真:竹井俊晴)

 東京が衰退するかもしれない──。そんな不安を抱かせる統計が2022年に入り明らかになった。総務省がまとめた住民基本台帳に基づく21年の「人口移動報告」で公表されたデータだ。東京23区から転出した人の数が転入者を1万4828人も上回り、神奈川県や埼玉県などの近隣県に都民が流出したと分かったのだ。比較可能な14年以降で「転出超過」は初めて。過去のデータも含めれば実に25年ぶりのことだ。

 21年に江東区から千葉県に転居した福田恵さん(30、仮名)は、「テレワークの定着で都心のオフィスに出勤する必要性が減った。それならば、家賃や物件価格の安い地域に住んだ方がいいと考えた」と話す。福田さんは共働きで2児の母でもある。子育て環境も考慮して東京を離れたという。新型コロナウイルス禍で加速した働き方改革が、人々に東京脱出の選択肢を与えている。

 変調の兆しは都民の居住地選びに限らない。多くの企業を受け入れ、人々が働くオフィスの立地でも「東京である必要性」が問い直されている。それは、都心部の一等地でも同じだ。

東京駅前オフィスが埋まらない

 「あれほどの一等地なのに、借り手企業(テナント)探しに苦労しているらしい」

 不動産関係者の間でそんな噂が飛び交う複合ビルが「東京ミッドタウン八重洲」。東京駅前で建設が進む地上45階建ての超高層ビルを中心とした街区だ。6月に複数の関係者に話を聞いたところ「8月竣工で完成間際にもかかわらず、目玉の超高層ビルのオフィスフロア(推定延べ床面積約13万m2)のうち半分程度しかテナントが決まっていない」という。

 新型コロナウイルス禍の前は、一等地の大型新築ビルならば売り手市場だった。高い賃料を設定してもテナントが飛びつき、早い段階で募集面積が埋まった。「東京駅前の好立地で、これほどテナント集めに苦戦する状況は、近年では珍しい」(不動産投資を手掛けるファンドの幹部)といった声も聞かれる。

 テナント集めの難しさに加え、目先には不動産関係者の心胆を寒からしめる状況が控えている。都心部での大規模複合開発プロジェクトの完成が相次ぐ「2023年問題」だ。

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この記事はシリーズ「岐路に立つTOKYO ~進化か、衰退か~」に収容されています。WATCHすると、トップページやマイページで新たな記事の配信が確認できるほか、スマートフォン向けアプリでも記事更新の通知を受け取ることができます。