AI vs. 教科書が読めない子どもたち』(東洋経済新報社)の著者として知られる新井紀子先生による、ビジネスパーソンのための数学講義。AI(人工知能)がますます発展し、DX(デジタルトランスフォーメーション)がさらに進む時代に必要な数学力とは何か? これからの時代を生き抜くための数学力を、どう身につけたらいいのか? ど文系の編集担当(オノ)が、長年の数学コンプレックスを解消するべく、生徒役を務めます。

前回のお話をうかがって思うに、新井先生が問題提起されているのは、「AIを活用する時代に、昔のままの算数や数学の学び方ではいけない」ということなのでしょうか。

新井紀子さん(以下、新井):「問題がこういう感じできたら、こう返せばいい」式の勉強では、これからは難しいでしょうね。

それが耳の痛いところで、私自身、「問題がこういう感じできたら、こう返せばいい」式の勉強で学生時代、何とか数学を乗り切ってきたタイプです。それこそ「チャート式」みたいな問題集を繰り返し解いて、「解法パターンの暗記」をするという……。それが邪道だという自覚はあったんですが、そうしないことには目の前に迫った定期試験や入学試験というハードルを越えられないという現実もあって。

新井:そうですよね。私もそうでした。

なんと! 先生もそうでしたか。新井先生のような本当に数学ができる人は、解法パターンの暗記みたいな邪道なことはしないで、地頭とセンスのよさで解いちゃうようなイメージがあって、憧れるというか、引け目を感じていたのですが。

新井紀子(あらい・のりこ)
新井紀子(あらい・のりこ)
東京都出身。一橋大学法学部および米イリノイ大学数学科卒業、イリノイ大学5年一貫制大学院を経て、東京工業大学より博士(理学)を取得。専門は数理論理学等だが、人工知能や地方創生など、文理融合分野で幅広く活動をしている。2011年より人工知能プロジェクト「ロボットは東大に入れるか」プロジェクトディレクターを務める。2016年より読解力を診断する「リーディングスキルテスト」の研究開発を主導。一般社団法人「教育のための科学研究所」代表理事・所長。

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