国家間の争いは、情報工作や経済制裁などを複合した「ハイブリッド戦」の様相を呈している。その新たな戦闘手段として浮上し、脅威を増しているのがサイバー攻撃だ。国家が主導し、経済的利益のために海外企業が被害に遭うケースも多い。もっとも、国家がこうした秘密裏での動きだけでなく、公然と民間企業から情報を得られる体制を整えているとの指摘もある。日本企業はサイバー空間でどのように技術情報を守ればいいのか。

■連載予定(タイトルや回数は変わる可能性があります)
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トヨタ自動車の国内全工場の稼働休止を招いたサイバー攻撃。国家が関与している可能性もある(写真:ロイター)
トヨタ自動車の国内全工場の稼働休止を招いたサイバー攻撃。国家が関与している可能性もある(写真:ロイター)

 3月1日、トヨタ自動車は国内にある全14工場の稼働を止めた。長く続く半導体不足が原因ではない。サプライヤーを標的としたサイバー攻撃が発端となった。

 狙われたのは内外装の樹脂部品などを手掛ける小島プレス工業(愛知県豊田市)。トヨタの1次部品メーカー(ティア1)の一社だが、デンソーなどのメガサプライヤーに比べればその事業規模は小規模だ。そんな小島プレスがコンピューターウイルス感染などを確認したのは2月26日夜のこと。翌日には感染拡大予防のため部品の受発注システムを遮断。部品供給は止まり、稼働停止に至る。

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 稼働停止は1日で済んだ。トヨタは国内でも随一のサイバーセキュリティー体制を敷いているとされ、だからこそ、影響は最小限に食い止められたと言える。ただ逆に言えば、巨大企業ですら、供給網の一角がサイバー攻撃を受けると、生産ラインがまひするということでもある。

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