公安調査庁は技術の流出経路として主に7つを指摘している。中でも合弁会社の設立や業務提携などといった「協力関係」を通じて技術が流出するリスクは分業化とグローバル化が進む経済環境の中で中小企業を中心としたあらゆる企業について回る。そんな中、日本発であるiPS細胞関連のスタートアップ企業が資金難で苦しんでいる。虎の子の再生医療技術を、日本は守り切れるだろうか。
■連載予定(タイトルや回数は変わる可能性があります)
・「まさか中国に漏れるとは」 日鉄元技術者の後悔
・次世代太陽電池、ノーベル賞級・日本人開発者も驚く中国の包囲網
・海外勢が羨望 危機迫る「夢の再生医療」iPS細胞を守れるか(今回)
・偽物がいつの間に“本物”に、拠点リスクに身構える国内企業
・主戦場はサイバー空間へ、国家間の負けられない闘い
・高度化する手口、知財を守り、成長する3カ条はこれだ
・高市早苗・経済安全担当相に聞く、日本の技術を守るには

「あと3年あれば」。こう話すのはメガカリオン(京都市)の赤松健一社長だ。同社は他人のiPS細胞から血小板製剤を製造する技術を持つ。通常の血小板製剤は献血の血液から血小板などを取り出してつくるが、保存期間は採血から4日と短く、他の血液製剤に比べ供給不足に陥りやすい。そもそも少子高齢化で献血による血液の確保は難しくなっている。
メガカリオンの技術は献血に頼らず製剤を製造できる。保存期間も「1週間から10日程度まで延ばせそうだ」(赤松社長)。2022年には初期段階の臨床試験(治験)を始め、血小板が少ない患者1人へ製剤を投与。副作用などの報告はなく、体内の血小板数の増加も確認できたという。
医療のインフラである輸血の常識を変え得る血液製剤の実用化に向け、順調に歩みを進めているように見えるが、メガカリオンは今、危機に陥っている。原因は資金不足だ。
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