技術流出はどのような経路をたどるのか。公安調査庁は「人材リクルート」「投資・買収」「不正調達」など主に7つの流出経路を指摘している。日経ビジネスはリスクを「人材」「協力関係」「拠点」の3つに分類し、ポイントを探った。第2回では人材に焦点を当てる。

日本の技術の源泉となる頭脳の「海外移動」は深刻だ。毎年1500人の技術者が国外へ流出しているとの推計もある。次世代太陽電池とされる「ペロブスカイト型」は宮坂力・桐蔭横浜大学特任教授が開発し、ノーベル賞受賞候補にも名前が挙がる。だが、ペロブスカイト太陽電池関連の論文数は中国が圧倒しており、発明国として見る影もない。

■連載予定(タイトルや回数は変わる可能性があります)
「まさか中国に漏れるとは」 日鉄元技術者の後悔
・次世代太陽電池、ノーベル賞級・日本人開発者も驚く中国の包囲網(今回)
・海外勢が羨望のまなざし、「夢の再生医療」iPS細胞を守れるか
・偽物がいつの間に“本物”に、拠点リスクに身構える国内企業
・主戦場はサイバー空間へ、国家間の負けられない闘い
・高度化する手口、知財を守り、成長する3カ条はこれだ
・高市早苗・経済安全担当相に聞く、日本の技術を守るには

 「先生が開発した技術を世界に広めたい。うちの会社の技術顧問になってほしい」

桐蔭横浜大学の宮坂力・特任教授は4年ほど前、かつて教え子だった中国人研究者から、こんな要請を受けた。新技術への意欲と小規模なベンチャーであることを考慮し、了承した。

 宮坂氏は、次世代太陽電池として期待され、世界で開発競争が繰り広げられている「ペロブスカイト太陽電池」を開発した人物だ。フィルムのように薄く、ぐにゃりと曲げられる太陽電池の発明は「世の中を変える画期的技術」と称賛され、ノーベル化学賞の有力候補にも挙がる。

 製造コストは従来のシリコン太陽電池の約半分、厚さは100分の1程度になる。室内の壁面や自動車のボディーの曲面など、従来の太陽電池では設置困難な場所に置くことができるため、脱炭素を加速させる切り札になる日本発の技術だ。

宮坂力・桐蔭横浜大学が開発したペロブスカイト太陽電池。薄型で多くの用途に利用できると期待される(写真:吉成大輔、以下同)
宮坂力・桐蔭横浜大学が開発したペロブスカイト太陽電池。薄型で多くの用途に利用できると期待される(写真:吉成大輔、以下同)

中国が論文数で圧倒

 国際的な注目を浴びるこの技術に目を付けているのが中国だ。

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