エネルギー価格の高騰で膨らみ続けているのが日本の貿易赤字額。経済制裁など「対ロシア」対応では先進国と足並みをそろえるが、米国などとは置かれている状況が異なる。資源の産出国である米国や中東、それら地域に権益をもつ欧米メジャーは収益を伸ばしているからだ。エネルギー輸入国の立場から脱却せねば、日本の国富は流出し続ける。

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再稼働のめどが立たない東京電力柏崎刈羽原発5、6、7号機(写真:共同通信)
再稼働のめどが立たない東京電力柏崎刈羽原発5、6、7号機(写真:共同通信)

 「どの時期と申し上げられる段階ではない」。9月30日、東京電力ホールディングスが開いた会見で、小早川智明社長は、柏崎刈羽原子力発電所6、7号機の再稼働の目標についてこう答えた。同原発は2021年、テロ対策工事で不備が発覚。現在、複数の改革に取り組んでいるが、原子力規制委員会や地元の了承をまだ得られていない。電力の最大需要地である東電管内での原発再稼働が待たれるが、「今冬の稼働は現実的に難しい」と東電関係者は話す。

過去2番目の貿易赤字

 9月末に発表された今冬の電力需給見通しによると、東電、東北電力管内の供給余力を示す予備率は23年1月に4.1%、同2月に4.9%。最低限必要とされる3%は超えるが「この予備率に、ロシアの天然ガス事業『サハリン2』からの途絶は盛り込まれていない」(電力大手)。途絶が現実となり予期せぬ気候の悪化があれば計画停電もちらつきかねない。電力関係者らの警戒感は例年以上に強い。

 燃料価格の高騰がもたらすのはエネルギー安定調達への懸念だけでない。過去最悪レベルの勢いで膨らみ続けているのが貿易赤字だ。

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