「もう販売価格への転嫁しかない」「将来への投資ができない」──。エネルギー価格の高騰で産業界が悲鳴を上げている。関西の企業は電力会社の値上げが、独占禁止法が禁じる優越的地位の乱用に当たるとして公正取引委員会に申告書を送付、また自治体は新電力を相手に提訴した。企業など電気利用者の我慢は限界に達しつつあるが、電力業界では料金上限の見直しを検討する企業も出てきている。
■連載予定(タイトルや回数は変わる可能性があります)
・原発核ごみどこへ、調査開始で分断された北海道の町
・漁業お助けマン、38歳核ごみ反対派が力説するその理由
・陸上風力発電のジレンマ 自然エネ開発が自然の脅威となるのか
・新電力の相次ぐ値上げと破綻、電気代2倍に老舗遊園地が悲鳴
・生産コストの半分がエネルギー、産業界は「危機的状況」(今回)
・この冬を乗り越えられるのか サハリン2「途絶」、2つのケース
・流通止まらぬ国富 日本はエネルギー弱者からの脱却を
「製品の値上げは2月に続いて9月にも実施したが、想定以上の速さでエネルギーコストは上昇している。このままではコスト全体の5割近くに達しそうで、危機的状況だ」。東京・品川駅近くにある、段ボール大手レンゴーの東京本社。柏木英之・製紙部門生産本部長はこう訴える。

レンゴーが属する紙パルプ業界では、生産過程で大量のエネルギーを使う。同社が使う電力は、7割強を自家発電で賄い、3割弱を電力会社から購入する。電力会社に払う電気料金と自家発電で使う燃料、その両方で価格上昇が止まらない。
「自助努力では乗り越えられない」


生産コストに占めるエネルギーコストの割合は足元で3割。残りの7割は、段ボール古紙や生産過程で使用する薬品などだから、削減幅は限られている。「もはや自助努力でこの難局を乗り越えられない」と柏木氏は厳しい表情で言う。
2022年4~6月期決算の営業利益は前の期の3分の2となる77億円に減少。最大の押し下げ要因が38億円の増加となったエネルギーコストだ。早くから省エネ対策にも取り組み、経済産業省から、4段階ある達成レベルのうち最高の「Sクラス」を与えられている。省エネの努力は続けるが、その余地は狭まっている。
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