ウクライナ危機や円安などによる燃料代高騰を背景に電気代が跳ね上がっている。2016年の電力小売り全面自由化後、参入が相次いだ新電力による経営破綻も増加。市場の旗振り役だった新電力と契約していた事業者からは悲鳴が上がる。寄付によって新型コロナウイルス禍を乗り切った直後、電気代高騰に見舞われた老舗遊園地を訪れた。

■連載予定(タイトルや回数は変わる可能性があります)
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 JR新潟駅から南東へ車で約50分の新潟県阿賀野市。山あいの美しい田園風景のなかを進むと、赤色の三角屋根が特徴的な西洋風の建物が見えてきた。1976年創業の老舗遊園地「サントピアワールド」である。

サントピアワールド
サントピアワールド

「電気代が倍になる」との通達が

 「電気代は昨年度、約1820万円だったが、『今年度は約3580万円になる』と契約する電力事業者から言われた。値上げ額の桁が1つ違うのではないかと目を疑った。皆さんからの寄付で新型コロナウイルス禍を乗り切ったばかりなのに」。サントピアワールドの高橋修園長はこう嘆息する。

 同園は2020年4月、新型コロナの感染拡大に伴う政府の緊急事態宣言で休園に追い込まれた。来園者が激減し、経営が急速に悪化した。資金繰り悪化を救ったのがクラウドファンディング。窮状を訴えると約5500万円の寄付が集まり、事業停止という最悪の事態を免れた。

 ところが、今度は電気料金の高騰である。契約していたのは、安さが売りの新電力だ。アトラクションの維持だけでも年間3000万円ほどかかる。高橋園長は、4年ほど前から少しでもコストを下げようと、新電力会社に切り替えた。大手電力会社よりも2~3割安くなった。ただ、新電力は大手よりも価格が安い半面、市場の影響を受けて電気代が高騰するリスクがある。今の電力会社よりも安価に供給を受けられる他の電力会社がないか探したが、見つからなかった。

 「ウクライナ危機以降、ガソリンなどの燃料価格が上がっていた。電気料金も1~2割上がるなら仕方がないと覚悟していたが、まさか2倍になるとは考えてもみなかった」。高橋園長はこう肩を落とす。例えば、メリーゴーラウンドの電球を間引きするなどの対応をしたが、焼け石に水。7月から乗り放題チケットを一律400円値上げした。1割前後の引き上げとなる。これで電力によるコスト増をすべて吸収できるわけではないが、残りは節電など企業努力を続ける考えだ。

「まさか電気代が倍になるとは思わなかった」と語るサントピアワールドの高橋修園長
「まさか電気代が倍になるとは思わなかった」と語るサントピアワールドの高橋修園長

 園内を巡ると、さび付いた遊具や設備もあり、老朽化も目立つ。例えば、このほど復活した、ブランコで空中を周回する「ウエーブスインガー」。故障して3年前から止まっていたが、奇跡的に部品を調達できた。そんなウエーブスインガーもよく見ると、壁面の着色が剥げ落ちている所も多い。次に故障すれば、部品調達は厳しく、動かすことができなくなる可能性が高いという。

1976年創業の同園の遊具・設備は老朽化も目立つ
1976年創業の同園の遊具・設備は老朽化も目立つ
このほど復活したウエーブスインガー。次故障したら動かない可能性があるという
このほど復活したウエーブスインガー。次故障したら動かない可能性があるという

 綱渡りの経営が続いても、施設の老朽化に伴う補修などの投資は削れない。新型コロナの影響が続くなか、今回の電気代高騰は苦しい。だが、高橋園長は「遊園地は思い出づくりの場。ここには世代を超えた多くの記憶が詰まっている。園のともしびを消したくない」とこらえる覚悟だ。

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