(前回から読む)
核のごみ問題で揺れる北海道南西部の港町・寿都町。2年前、片岡春雄・町長が率先し原発から出る高レベル放射性廃棄物の最終処分場の文献調査に手を挙げた。町では賛否が渦巻き、町民の間で分断が起きた。反対派が懸念するのは、基幹産業の水産業で漁場が失われることによる町の衰退だ。まず最終処分場ありきではない新たな町づくりへの議論を求める声は、日に日に強まっている。
■連載予定(タイトルや回数は変わる可能性があります)
・原発核ごみどこへ、調査開始で分断された北海道の町
・漁業お助けキーマン、38歳核ごみ反対派が力説するその理由(今回)
・陸上風力発電のジレンマ 自然エネが自然を脅かす?
・新電力の相次ぐ値上げと経営破綻、電気代2倍に老舗遊園地が絶叫
・エネルギーコストが全体の5割も 産業界を押しつぶす負担増
・この冬を乗り越えられるのか サハリン2「途絶」、2つのケース
・流通止まらぬ国富 日本はエネルギー弱者からの脱却を
(前回から読む)
「多くの『核のごみ』に対する心配の声があった」
2021年10月、北海道寿都町で行われた町長選挙で、6選を果たした片岡春雄町長は、こう述べた。そこに笑顔はなかった。
核ごみ最終処分場文献調査に関し、住民の反発を浮き彫りにしたのが、町長選挙だった。20年ぶりの選挙戦の投票率は84%を超え、文献調査の賛否が事実上の争点となった。

漁場消滅につながる
反対を訴えた対抗馬の候補を破り、片岡町長が6選を果たしたが、反対候補の票は全体の44%を占め、わずか235票差の辛勝だった。町民との対話がもっと必要だと考えた片岡町長は、第2段階の概要調査へ進むことの是非を問う住民投票を実施するにはまだ時間がかかるとみている。
9月中旬、北海道岩内町で開催された会合で、寿都町に住む大串伸吾さんが聴衆に語りかけた。「町づくりの本質的議論は『その地域に住む人々の幸せ』を考えること。各地域に合った指標づくりをしていかなければならない」。会のテーマは核ごみの道内への持ち込み拒否などを訴えること。もちろん最終処分場の誘致には、反対の立場だ。

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